雪月花
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その64「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・重陽

2016年4月30日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

 

 

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある

という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する

という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。

 

知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

 

季節を大切に過ごす

日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

 

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを

ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

 

 

九月九日(重陽・ちょうよう)

九という陽の数字が二つ並ぶ

おめでたい重陽の節句には、

菊花を飾り、

花びらを浮かべた菊酒を飲み、

綿を被せて一晩置いた菊の露で肌をぬぐ う

などして長寿を祈ります。

菊のお酒

奈良時代にもたらされた菊の花は、

中国では梅・竹・蘭と共に四君子として敬われていました。

「菊花のポプリ」

菊花のポプリ

菊の花は大変に乾きにくいお花です。

花びらをばらして

重ならないように紙の上に広げ、

温風器の前やコタツの中を利用して乾かすと良いでしょう。
ハッカやセージは

軽くもんで香りをたて

丁子と八角は乳鉢であらく砕いて調合し、

密閉した状態で1~2週間ほど冷暗所で熟成させ

それぞれの香りをなじませます。

すべての香りが混じり合い

香りがひとつに調和しましたら、

お気に入りの器に盛り付け、

紅葉や赤い実などを飾って

菊花の咲き乱れる秋の日を演出してみましょう。
菊は花葉ともに薫り高い植物ですので

あえて香りのオイルは加えずに仕上げ、

古代中国の時代から愛されてきた

菊本来の清らかな香りを楽しむことにいたしましょう。 

 有職飾り「錦秋の薬玉」

 有職飾り風・錦秋の薬玉  

大輪の菊に

赤もみじ・黄色イチョウ

そしてススキや小菊など

季節を彩る草花を合わせ、

淡路結びをほどこした六色の組紐で構成した薬玉飾り。

紐はスゥッと長く下へと垂れ下がり、

床になびく様が大変優雅でしょう。有職飾り風・錦秋の薬玉

普段なかなか目にすることのない有職飾りを、

ぜひ暮らしに取り入れて欲しいという思いから

製作してみました。

その色彩は極彩に近いもので構成され

また、陰陽道とも深く結びつき独特の美しさを放っています。

 重陽の節句飾り 「茱萸嚢(しゅゆのう)」

20151110_164808

古代中国では

9月9日の重陽節に、

実のついた山茱萸の枝を頭に挿して小高い山に登り、

気持ち良い秋の風に吹かれながら

菊酒を飲んで災いを払う風習がありました。

これが日本へと伝わり、

奈良平安時代の宮中では

菊花と赤い実をつけた山茱萸の造花を

“あわじ結び”を施した美しい袋に飾る

『茱萸嚢』が作られ、

翌年の端午の節句の薬玉飾りと

掛け替えるまで

自邸の御帳台の柱に吊るし魔除けとしました。

茱萸嚢の中には

乾燥した“呉茱萸/ごしゅゆ”の実をおさめます。

ピリッとした独特の強い芳香には

虫を遠ざけ毒を消し去る力が秘められおり、

辛みが強い程に良品といわれ

20160209_160905

邪気や病い・湿気までを取り除く力が

みなぎっているとされています。

 

 「寒椿の香袋」

寒椿の香袋

日本の全土に自生する椿の花は、

その昔ヨーロッパへと渡り

エキゾチックな“東洋の薔薇”と称されました。

フランスの小説家デュマの綴った『椿姫』は、

高価な椿を毎日取り寄せ飾った

美しい娼婦マルグリットの悲しい恋の物語です。

青年アルマンの真実の愛に気付くも

不治の病にかかり、

椿の花がポトリと地面に落ちるように

その美の絶頂で息絶えたマルグリット・・・。

彼女の髪に飾られた東洋の薔薇をイメージし、

白檀をベースに

オールドローズの香りを合わせて

椿香の香りといたしましょう

 「五穀豊穣の稲穂飾り」 

 五穀豊穣の稲穂飾り

11月23日に執り行われる「新嘗祭」は、

その年に収穫された穀物に感謝を込めて

神様にお供えをし、

天皇自らも新穀をはじめて口にされる宮中行事です。

農耕民族である日本の稲作は、

縄文時代からはじまりました。

お米は精霊が宿る神聖な穀物として、

日本人の精神に特別な思いを持って

刻み込まれていくことになります。

今年収穫された稲穂と榊葉をもちいて

「五穀豊穣の稲穂飾り」を製作しましょう。

重たげに穂を垂れる稲を

一本一本清めていくと、

どこか懐かしいような稲藁の匂いにつつまれ、

幼い日に父の田舎で遊んだお米の収穫の風景がよみがえってきます。

パンやスパゲッティなどが

食卓に並ぶようになり、

毎日食することのなくなったお米ですが、

旅先の車中からながめる田んぼの風景は

いつも私の心を和ませてくれます。

爽やかな5月の風に揺れる水面の早苗、

天に向かって伸びゆく初夏の若草、

重たげに穂を垂れ実りにさえずる雀たち、

そして収穫の後の静まり返った田の風景。

季節とともに変わりゆく

その風景に触れるたび、

自然の摂理がかくも正しく巡回しているように感じ

心は安堵するのでしょう。

日本の原風景といえる稲田は、

これからどうなっていくのでしょうか。

できることならば未来の子供たちとも

この感慨を共有したいものと願います・・・。

 

2016年05月07日 up date

その63「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・七夕

2016年4月26日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

 

 

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある

という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する

という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。

 

知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

 

季節を大切に過ごす

日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

 

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを

ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

 

 

七月七日(七夕・しちえ)

七夕は、

牽牛星が天の川を渡り

一年に一度織姫星に会うという中国の伝説が、

日本の棚織姫の信仰と交じり合いできた星祭り。

夜空を眺めて梶の葉に歌をしたためたり、

庭に並べた棚にお供えをし

五色の糸を張るなどして機織や手芸の上達を祈るお祭りです。

「潮騒のポプリ」

潮騒のポプリ

まだまだ幼いと思っていた若葉が

いつの間にか成長を遂げ、

生き生きと力強く息づいてきました。

大地をうるおす梅雨が過ぎ去れば、

まぶしい初夏の光りにつつまれるのも間近でしょう。

さあ今回は季節を先どりして

「潮騒のポプリ」をつくりましょう。

貝殻や砂に苔の香りを揉み込んで作った粘土の珊瑚など

海からの贈り物を飾りつければ、

爽やかな香りとともに遠い潮騒の音が聞こえてくることでしょう・・・。

「香り貝合わせ」

 香り貝合わせ 

幼いころの記憶のひとつに、

砂浜にてんてんと散らばる貝殻をひろいあつめた

思い出があるかもしれません。

それぞれの貝のかたちや色合いには

不思議なおもむきがあり、

未知の世界へと誘うものでした。

平安時代、

宮廷貴族のあいだで流行したあそびのひとつに

「ものあわせ」というものがあります。

絵合わせ、花合わせ、扇あわせ

そして草あわせなど題材はさまざまに、

持ち寄ったものにちなんだ和歌をそえて

その優劣を競うというものでした。

貝合わせも

当初は和歌とともに貝の大きさや美しさ

種類の豊富さなどを競いましたが、

しだいに対となるハマグリを探す

あそびへと発展していきます。

お姫様の婚礼調度品には、

夫婦の幸せを願って

豪華な装飾がほどこされた一対の貝覆いが用意されました。

それでは、貝に詰めた香りを聞きわけてあそぶ

「香り貝合わせ」をつくりましょう。

二枚貝をきれいに洗い、

二つずつ匂いの強い香料を詰めて絹布でくるみます。

さあ、あなたはいくつ香りを当てることができるでしょうか。

「蝉の訶梨勒」

蝉の言可梨勒(かりろく)

その昔、

幻といわれた訶梨勒の実は、

スッとしたニッキのような芳香をそなえていますが、

香料としてだけでなく薬としての価値も高いものでした。

光明皇后が

亡き夫・聖武天皇の冥福を願い

正倉院におさめた数々の御物の中にも

その名は記載されており、

平安時代栄華を謳歌した

藤原道長も服用したと伝えられる訶梨勒は

「一切風病の治療薬」として万病に処方されました。
 

今回は吉祥の文様でもある

蝉をかたどった装飾掛香に、

訶梨勒の実と伝統的な香料を調合しておさめます。

複雑に絡み合うそれぞれの香りは、

やがてひとつの完成された芳香を放ち

雅やかな室礼となることでしょう。

 「蓮の実のポプリ」  

蓮の実のポプリ

「蓮の実のポプリ」には、

終わりを告げ

来世へと命をつなげた植物を集めて盛り付けましょう。

キラキラと水面を揺らす陽の光のように美しい龍脳は、

天上の花にふさわしい蓮に寄り添うようにして香りを放ち

静かにその生涯を讃えます。

龍脳とは、

龍脳木からとれる白い結晶で

スッと頭上へと抜けるような清涼感あふれる芳香と

高い防虫効果から香袋には欠かせない材料といえるでしょう。

20140909_112405

お料理のように中高に

そして立体的に蓮の実のポプリを盛り付けましょう。

ともにしつらえたお軸は、

平安時代に写経された泉福寺「装飾華厳経切」です。

このお軸との出会いは父が亡くなったときでした。

父の葬儀の時、

古物を扱っている義兄がそっと飾ってくれたのです。

私の心が現世を去り天へと召した父へと

向かっていたからでしょうか。

連なる端正な文字を眺めていると

何とも表現しがたい美しさに心が引き込まれます。

それ以後このお経が私の心から離れることはありませんでした。

一年を経たころ

父の供養にぜひ写経を飾りたいと思い立ち相談したところ、

このお軸を譲ってくれたのです。

それからこのお軸は

私の無二の宝物となりました。

蓮のポプリとともにしつらえると、

香りとともに

目を伏せ静かに微笑む

頑固で一途だった父の面影が思い出されます。

 

2016年05月07日 up date

その62「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・端午

2016年4月12日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

 

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。   知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉

そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

季節を大切に過ごす 日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

五月五日(端午・たんご)

「兜包みの五月飾り」

兜包の五月飾り

邪気を払うといわれる薬草”菖蒲葉”と、

礼法から生まれた折形を組み合わせたデザインです。

折型とは、

室町時代の武家社会において和紙に包んで贈り物をする

という大切な礼節として誕生し、

包む中身によって多種多様な造形が生み出されました。

特徴的なシボの入った高級和紙”檀紙”

布で作った菖蒲の若葉

爽やかな新緑の楓をあわせ、

白と緑のシンプルながら格調高いお飾りへと仕上げていきます。

「杜若の結び文」

杜若の結び文

五月の爽やかな風の流れる湿地に

紫のグラデーションを描くように咲き乱れる杜若。

この花は多くの芸術家に愛された姿美しい名花といえるでしょう。

美しい色合いの薄絹で

花びらを一枚ずつ縫い上げ、

真っ直ぐに伸びる細葉と一枝の青楓を添え、

根元には薄様の和紙に香をしのばせた文を結び仕上げました。

“結び文”とは

古来の手紙の様式のひとつで、

季節をいろどる花や木の枝を手折り

贈り物や手紙に添えて届ける、

なんとも風情あふれる習わしです。

結び文の香は

5月から6月にかけて出回る青山椒の実に

桂皮や丁子を合わせて調合しました。

その香りはじつにすがすがしく、

杜若・青楓・青山椒と季節を同じくする者同士

大変相性の良い組み合わせとなりました。

2016年05月07日 up date

その61「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・上巳

2016年4月10日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

 

 

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある

という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する

という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。

 

知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

 

季節を大切に過ごす

日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

 

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを

ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

 

 

三月三日(上巳・じょうし)

「ふくら雀の香り雛」

ふくら雀の香り雛

春を迎えての待ち遠しいお節句“ひな祭り”。

 幼い頃、ひな壇に行儀よく並べられたお雛様を

飽きずにジッと見つめた思い出がある方も多いことでしょう。

天より舞い降りた招福鳥に、

天冠・玉冠をあしらって愛らしい『香り雛』を作ります。

幸せの訪れを願いふっくらと膨らんだ身体には、

神聖なる白檀や桂皮・丁子・零陵香などを調合して詰めました。

有職飾り「桜の平薬(ひらくす)」

有職造花・桜の平薬(ひらくす)

  

柔らかな若葉とともに

日本列島を南から北へと埋め尽くしていく山桜。

甘い花の蜜を求めて枝から枝へと飛びかう小鳥とともに、

輝く春の微笑ましい情景を平薬に表現してみましょう。

本物と見紛うほどに愛らしい“トミカ製 メジロのヒーリングバード“

を添えてそのさえずりに耳を傾ければ、

自然の野山の情景が浮かび上がってくることでしょう。

「桜舞う日のポプリ」

桜舞う日のポプリ

粗塩に様々な香りの材料を

漬け込んでつくるモイストポプリは、

十八世紀のフランスで盛んにつくられた

香りの楽しみ方です。

熟成期間は2~3ケ月と長くかかりますが、

粗塩には腐敗をふせぎ香りを保つ力があるので

数十年も香りを楽しむことができるでしょう。

ドライポプリでは決して生み出せない、

甘く女性的な芳香がこのポプリの魅力です。

今回は

“桜の塩花漬け”に

様々な香料を調合して仕上げました。

めでたい日の桜茶につかわれる桜の花漬けは、

お湯を注ぐとユックリと開き始め

桃色の花びらが優雅にユラユラ揺れる様がとても美しいですね。

これは摘み取った桜の花を

塩漬けし梅酢を加えてつくられていますので、

ポプリが完成したばかりは

梅酢の香りが強く感じられるかもしれませんが、

飾っていくうちにそうした香りは抜け

爽やかな桜本来の優しい芳香が残ります。

ピンクの色合いが大変きれいですね。

「桜の香り花びら」

桜の香り花びら

マシュマロ粘土に

桜のオイルを練り込んでつくった桜の香り花びら。

薄く成型するほどに

ヒラヒラと風に舞い散る桜のような

繊細な花びらに仕上がることでしょう。

桜のポプリに一ひら添えて、

桜吹雪の樹の下にソッとたたずむ喜びを演出します。

「紅白折り形の上巳節句飾り」

20160209_143739

紅の奉書紙と

白の檀紙で折りあげた華やかな吉祥飾り。

蝶の折形には雄と雌がありますが、

今回は女の子の節句に合わせ

雌の蝶形に整えました。

紅白梅の花枝と

優しい色合いで組み上げた稲穂結びが、

穏やかな春の日のお節句を祝福します。

2016年05月07日 up date

その60 「茶杓削り」

20150517_1127562016年3月27日

 

 

茶道の世界の扉を開いたのは、

まだ若き高校生の時。

 

自宅の応接間を茶室に改装したのを機に、

一番上の姉が近しいものに茶道を教え始めたのです。

 

私立の女子高に通っていた私は、

友人数名と学校帰りに

興味本位でお稽古をはじめました。

 

正座もままならず、

しびれたと言っては笑い

マジメな顔をしてるといっては笑い

お茶が苦いと言っては笑い

 

大したこともないことに

おかしくて仕方がない私たちにとって

その時間は美味しい和菓子がいただける

楽しい時間のひとつでしかありませんでした。20160206_134310

 

 

 

まだその世界の奥深さも

全く理解しないままに・・・。

 

 

月日は流れ、やがて茶道は

私の人生になくてはならないほど

貴重なものへとなっていきます。

 

自分の人生に戸惑いを感じているとき

 

茶室という限られた空間に座っているだけで

不思議と心は静まります。

 

温かい茶碗のぬくもりを両手に感じ

フワッと湯気とともにたちのぼる茶葉の香りに満たされ

 

泡立ったお茶をソッと口に含むと

固まったからだと心が

ユックリとほぐされていくのでした。

 

 

日本文化を理解するには

茶道を始めると良いといわれるように

その世界には他国にはない

独特ともいえる日本民族の美意識が詰まっているといえるでしょう。

 

 

20140323_141125

 

 

茶道の世界を表現する言葉として使われる

「詫び寂び」

 

先日、尊敬する市川宗文先生にその意味を教えていただきました。

 

侘びとは、粗末な中に美を見出すこと

寂びとは、時を経てかもし出す美のこと

 

日本人ならでは価値観ですね。

すべてを悟りきったからこそ到達できる境地ともいえるでしょう。

 

 

まだまだ未熟ですが、

これからも茶の湯をとおして

たくさんのことを学ばせていただきたいと思っています。

 

 

今回わたしは初めて茶杓削りを体験させていただきました。

 

 

20160402_140654  初めて作った茶杓です。

 

「言祝ぎ(ことほぎ)」と銘をつけました。

 

 

20160327_140316

 

左が先生が準備して下さった竹です。この状態から削りだしていきます。

右は私が削った茶杓、中央にあるのは茶杓をおさめる竹筒です。

 

小刀で少しずつ少しずつ整えていくのですが、

乾燥しきった竹はとても固く

手を切りそうで思うように削ることができません。

 

自然と意識は集中し、

手元のみを見詰めて

ひたすら削ることに没頭していきます。

 

自分で体験したことで

その奥深さをあらためて実感することになるのでした。

 

竹を削りだしただけの茶杓に驚くほどの値が付けられているのを見て

驚かれる方も多いことでしょう。

 

時代の数寄者たちが自らの手で削りだした茶杓には

その方の美意識だけでなく、

生き方そのものまでが表れているのです。

 

また所持してきた歴々を拝見することで

 

上手に表現できませんが、

宗教的ともいえる茶道の世界に命を懸け

真剣に取り組んできた先人たちの思いを知ることができるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年04月12日 up date
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