新着情報

ブログ更新 その100 最終回「伊豆山神社と稚児天冠」

2021年8月3日

 

去る7月3日午前10時28分、

静岡県熱海市の伊豆山地区にある伊豆山神社の西側で、

大規模な土石流が発生しました。

 

またたくまに多くの住民の命を奪い去ったこの悲劇を知ったとき、

私の脳裏には、かつて訪れた伊豆山神社での神事が思い出されました。

 

2019年4月15日、

晴天に満開のシャクナゲの花が美しい春の光輝くこの日、

伊豆山神社では「例大祭」が執り行われました。

 

 

大変由緒あるこの神社は、

「伊豆」という地名の発祥地といわれており、

その創建は紀元前、第五代天皇・孝昭天皇(こうしょうてんのう)の時代まで遡ります。

 

奈良吉野山で修業をしたことで有名な山岳修験道の始祖・役小角(えんのおづぬ)は

伊豆へ配流された折に島を抜け出しこの伊豆山で修行したといわれ、

 

また、境内には 源頼朝と政子が逢瀬を重ねたという腰掛石が残されています。

 

 

 

 

 

祭りでは、神職によるお祓いなどの神事の後、
可愛らしい子供たちによって神社に古くから伝わる「神女舞」と「実朝の舞」が奉納され、

その後、厄年の男衆が担ぐ御鳳輦神輿が参道の837石段を勇壮に駆け下りていきます。

 

目の前で静かに進行する人々の往来をながめながら

私が何よりも感心したのは、人々の装束の素晴らしさでしした。

 

まるで平安の時代へと遡ったような錯覚に見舞われるほどに

清らかで美しく整えられた衣姿に身を包み

誰もが生き生きと、この神事に携わる一員であることの喜びに溢れているのを感じたのです。

 

特に巫女姿の母親に手を引かれて歩く子供たちの姿は、何とも愛らしく

心に深く刻まれています。

 

 

 

お母様の手に預けられていた稚児天冠は

神事の時に女の子が被る冠。

大変素敵な親子さんにお願いし、写真におさめさせて頂きました。

 

 

それから2年の月日が経った2021年4月、

私の手元へと古びた木箱とともに稚児天冠が届きました。

 

輝いていたであろう金銅には緑青がふき、いたるところに欠けもみられます。

でもなぜかその姿は凛と美しく、大変心惹かれるものでした。

 

今回の惨事に思いを馳せ、

長きに渡り神事に際し幼き子の頭に飾られてきたであろう天冠を

慰霊の心をもって室礼ます。

 

 

大きな災害は、私たちの心から消え去ることは無いでしょう。

それでも私たちは、前を向いて生きていかなければならないのです。

 

毎日手を合わせ、

あの神事に集った人々の笑顔が再びよみがえることを祈っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年8月3日 up date
新着情報一覧へ戻る
↑このページの一番上へ