雪月花
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その29 「仏陀の聖なる植物の香りと白檀の練香”雪月花”」

2014年 7月27日

 

インドを代表する香料「白檀」は、

心を落ち着かせる重さとまとわりつくかのような甘さを備えており

仏像や彫刻・お香や扇子などに利用され日本でも大変なじみの深い香りです。

神秘の国インドでは、

聖なる植物が神話や伝説に多く登場し宗教的信頼を得ていますが

それらは医学的に見ても理にかなうものでした。

2012-09-23 15.57.29

 

インドで誕生されたお釈迦様の生涯には

じつにたくさんの芳香植物が登場し、

香りに彩られていると言っても過言ではないでしょう。

それでは、ご一緒にその軌跡をたどってみることにしましょう。

釈迦立像

 

 

 

仏陀の聖なる植物の香り

 

お釈迦様は、紀元前4~5世紀ごろインドのカピラ国の王子

として誕生しました。

母である摩耶夫人が里帰りする途中、

ルンビニー花園の大変香りのよい菩提樹に手を触れたそのとき、

急に産気いた彼女の右脇下からお生まれになりました。

誕生の瞬間、天上からは蓮の花びらがヒラヒラと舞い降り

甘い香りの雫が降り注いだと伝えられます。

幼子は生まれてすぐに蓮の上を7歩あるき、

右手で天を左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と唱えられました。

その意味は、

”天上天下広しといえども誰もが尊い存在であります”

”それぞれが聖なる目的をもって生まれてきているのですよ”

と、私は解釈しています。

 

蓮池

 

生後一週間で母を失ったお釈迦さまですが、

その後すくすくと成長し16歳で妻をめとり子供を得ます。

しかし、

生老病死など人々の苦悩する姿を目にしたときから彼の鎮痛は深まり

「どうしたら人間を救えるものか」と苦悶した末、

29歳で真理を求めて密かに城を抜け出すのでした。

 

師との出会いを重ねてはさすらい、

壮絶な苦行を重ねる日々が6年におよんだ39歳の時、

彼は新たな道を切り開こうとある村に降りたちます。

やせ細ったお釈迦様を見た村娘スジャータは、

ミルクとチーズでお米を炊いた香り豊かな一椀のお粥を手渡すのでした。

その後、川で沐浴し菩提樹の林を抜けて大きな石の上で瞑想する彼に、

村人は爽やかなレモングラスで編んだ敷物を差し出します。

 

YosriNov04Pokok Serai.JPG

レモングラスはイネ科の植物で

                爽やかなレモンに似た芳香を放ちます。

 

瞑想する釈迦の心を乱そうと、

次から次へと悪魔が誘惑を仕掛けてきます。

しかし彼はこれをことごとく撥ね退け、

とうとうブッタガヤの大きな菩提樹の樹の下で悟りを開くに至るのでした。

 

 

 

 

 

 

 

インド・ブッタガヤの菩提樹

釈迦が悟りを開いた樹の子孫といわれます。

 

 

 

菩提樹(インドボダイジュ)・・・

 

この神聖な樹は、

ネパールやインドのほとんどの聖地・寺院に植えられているクワ科の高木で、

イチジクを小さくしたような丸い実をつけます。

菩提樹の寿命は非常に長く、

スリランカには紀元前288年に植えられたといわれる木が存在します。

お釈迦様は、完全な悟りを得る決意でこの樹の下に東を向いて座しました。

涼しい木陰は崇高な静けさを生み出し、

人々に生気を与えるといわれています。

 

 

その後45年間に渡り人々に説法を行ったお釈迦様ですが、

80歳で思い病気にかかり、いよいよ涅槃に入る時が近づくのを悟るのでした。

 

  釈迦涅槃図

多くの弟子・村人そして像や虎までもが寄り添い嘆き悲しんでいます。

 

 

弟子のアーナンダを連れ

クシナガラ城近くの沙羅双樹の樹の下に静かに横たわったお釈迦様は、

やがて多くの弟子に見守られながら静かにその生涯を閉じるのでした。

幾重にも丁寧に綿に包まれたその遺骸が荼毘に付される時には

じつに大量の白檀の香木が用いられたと伝えられています。

 

この世は ”生老病死”、 逃れきれない様々な苦しみに満ちているものです。

仏陀は人間に課せられたそうした苦しみに

どのように立ち向かえば良いかを追求し続けた人でした。

そしてその人生の最後に

この世は美しい。人生は甘美である。」

という言葉を残して旅立っていかれたのです・・・。

 

 

白檀(サンダルウッド)・・・

 

ビャクダン科・原産地インド

栴檀(センダン)とは中国名

白檀は単独では成長することのできない常緑無毛の半寄生植物で、

根の先端に小さな吸盤があり

他の木(ホストプラント)の値に寄生して養分を吸収し成長します。

豊かな香りの精油は、

樹齢30年以上の樹の心材からしか得ることができず、

上質といわれるものは80年以上の成長が必要です。

白檀の心材をシロアリが食べないことに気づいたインド人は、

切り倒した白檀をシロアリの大群に放置して貴重な心材を手に入れました。

栽培が大変難しい植物のため、

インド政府により伐採制限・輸出規制が設けられ

年々入手が困難になっています。

 

白檀の薫る場所には、邪悪な霊は忍び込めないと伝えられ

白檀や沈香で匂いを付けた黒色の油を

像の全身に塗り込める風習が古くからありますが、

ヒンドゥー教の信者らは白檀のペーストをシヴァ神の像に塗ることで

神を満足させ自らが信者であることを表すのでした。

 

 

ブッダが荼毘に付される時に多くの白檀が焚かれたように、

現在でも火葬のおりには白檀が用いられます。

豊かな者は薪として貧しい者には一片の木片が投じられ、

神々が喜ぶ香りとともに旅立つ死者の魂は

現世での苦しみを逃れ

ガンジス河の流れにのって来世 へと向かうのでしょう。

 

Varanasi 2010 ghats1.jpg 聖地ワーラーナシーのガンジス河

 

 

白檀の練香「雪月花」 

 

はじめて白檀の練香を製作したのは、今から10年ほど前になるでしょうか。

肌に優しいホホバ油にミツバチの蜜蝋を溶かし

白檀を基本とした天然香料を贅沢に配合した練香は、

時を経るごとに熟成され更に芳醇な香りを放つようになりました。

心を落ち着かせるインド白檀の神秘的な香りは、

心を静め瞑想にふさわしい芳香として

多くの宗教的儀式に用いられてきた歴史があります。

今回はお釈迦様の生涯にスポットをあて、

インドの聖なる植物を基調とした三種の練香を調合することにしましょう。

 

 

20140723_104332

 

手のひらに乗るほどの小さな器に香りを閉じ込め、

蓋をあけてその豊かな芳香を楽しむ「雪・月・花」白檀香

香りのバランスを考え残香性・安定性を重視して

高濃度に配合してみました。

 

 

 

「雪」・・・白檀と薬効高い草が生み出す神秘の香り

「月」・・・白檀と心惑わす3種の精油の至福の香り

「花」・・・白檀と聖なる花々がかもしだす魅惑の香り

 

それでは目をつむり、それぞれの香りをゆっくりと吸い込み

身体全体で感じとってみましょう。

特色の異なる三種の芳香は、

この地上に育まれる植物の豊かさを存分に伝えてくれることでしょう。

 

さあ、あなたのを一番ゆさぶる香りは果たしてどれでしょうか ♥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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