『香り花房・かおりはなふさ』では、日本の香りと室礼文化を研究しています。

香り花房 ー『香りと室礼』文化研究所 ー
恋しい匂い
第二夜 「静寂の香り・桜」
春の日差しをうける桜の葉 桜の国に住む私たちは、春の到来とともに様々な場所でその美しい姿を見ることができます。
 いつも何げなく通っている近くの神社や公園の桜、子供らを見守る学校の桜、川沿いの桜並木など、どの桜も自らを演出するかのように満開に咲き誇り、やがて一枚一枚ひらひらと舞い散りながら、その命の終わりをむかえます。
 日本人に愛されたこの花は、一重咲き、八重咲き、半八重咲きに菊咲きなど種類も多く、一つ一つに美しい名前がつけられました。
 人々の思いが込められたその名の由来を知ることは、身近に感じていた桜の花を、さらに深く思いやることになるでしょう。

桜の名前

楊貴妃桜(ようきひさくら)

楊貴妃桜 8世紀、中国・唐の時代に玄宗皇帝の寵愛を一身にうけた女性の名前からつけられました。  国が傾いたのは、彼女のせいとされ、殺されてしまった悲哀の物語は「長恨歌(ちょうごんか)」にせつせつと語られています。
 入浴した湯にまで彼女の良い香りが移った、といわれる絶世の美女・楊貴妃のふくよかな姿態は、八重咲きにふっくらと咲く楊貴妃桜に重なります。


衣通姫(そとおりひめ)

 「日本書紀」「古事記」に登場するこのお姫様の名前は、あまりの美しさにその肌が衣を通して輝くほどだったという逸話からつけられました。
 蕾の頃のピンク色が咲くにつれて淡くなっていくこの桜は、大輪の一重咲きでお姫様の可憐さを感じさせます。

御車返し(みくるまかえし)

 京都の洛北に修学院離宮を造営した後水尾天皇が、この桜の下を通られた折、あまりの美しさにその花びらが一重か八重かと論じ合い、牛車を引き反えらせたという逸話の残る桜です。
 実はこの桜、一重と八重に見えるものが一緒に咲く桜なのですね。

江戸彼岸桜(えどひがんさくら)

 4月のお彼岸の頃に咲く、早咲きのこの花は、本州・四国・九州の山野に自生しています。  国の天然記念物として指定されている有名な“根尾谷の淡墨桜”も、この種類の桜になります。
 淡墨桜といわれる逸話は、薄茶を帯びた若芽に暗い色調の白い花が咲き、その花びらが薄い墨を流したように感じられることから名前がつけられました。
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