『香り花房・かおりはなふさ』では、日本の香りと室礼文化を研究しています。

香り花房 ー『香りと室礼』文化研究所 ー
香りの情景

菊の香り

 日本の気候は四季に恵まれ、豊かに美しいものです。
 雲の流れや匂い立つ花々、変わりゆく山肌など一年をとおして変化に富んだ自然を楽しむことができます。
 そうした中、私たちは折々に相応しい節句や行事を文化として伝えてきました。秋におこなわれる「重陽の節句」もそのひとつでしょう。
 秋の花“菊”はヨモギに似た清涼感あふれる日本を代表するお花です。

菊花のポプリ


「重陽の節句」

 「重陽の節句」とは五節句のひとつで、秋の菊の盛りのころ、九月九日におこなわれます。
 この日は、中国の易の世界でいう“陽”の数字“九”が二つ重なる事から“重陽”といわれ、大変に縁起の良い日にあたります。

 菊の花を飾り、菊の花びらを浮かべた菊酒を飲みかわすなど、長寿延命を願ってさまざまな行事がおこなわれました。前日の夕刻から菊の花に綿を被せ翌朝、露でしっとり濡れた綿で肌をぬぐうという“被綿(きせわた)”もそのひとつで、菊花の香りの染み込んだ朝露とともに、人々の老いをぬぐい去るという意味合いがあったのでしょう。

 同様に、菊の花をほぐして乾かし枕に詰めた「菊枕」にも、菊の香りに精神を感じ長寿の願いとともに作られてきたという歴史があります。
 ここに、ある女性により贈られた切ない菊枕のお話がありますので、ご紹介しましょう。

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