日本の香りと室礼

目次

その参「飾る」

七月七日(七夕・しちえ)

「七月の平薬(ひらくす)」
「七月の平薬(ひらくす)」
『懸物圖鏡(かけものずかがみ)』 西村知備(にしむらともなり)著

七夕は、
牽牛星が天の川を渡り一年に一度織姫星に会うという中国の伝説が、
日本の棚織姫の信仰と交じり合いできた星祭り。

夜空を眺めて梶の葉に歌をしたため
庭に並べた棚にお供えをし
五色の糸を張るなどして機織や手芸の上達を祈るお祭りです。

七夕伝説

その昔、天の川のほとりに
美しい布を織る織姫が住んでおりました。
彼女の織る布は、季節の移り変わりと共に五色に色を変えるという、
それはそれは見事な錦の織物でした。

ある日父親である天帝は、年頃になった織姫と
天の川の西に住んでいる牛飼いの青年を結婚させることにします。
ひとめで恋に落ちた二人は幸せに暮らし始めるのですが、
彼に夢中の織姫は、機織の仕事をまったくしなくなってしまうのでした。
娘の様子にとうとう怒った天帝は二人を引き裂き
織姫に再び天の川の岸辺で機を織ることを命じます。

そして一生懸命に仕事をするならば、
一年に一度七月七日の夜にだけ牽牛と会うことを許すと申し渡します。
あまりの悲しみに涙にくれる二人ですが、
愛する人への思いを胸に七夕の夜を待ち望むのでした。

「潮騒のポプリ」
「潮騒のポプリ」
「潮騒のポプリ」
(材料)岩塩・サンゴ砂・様々な貝殻・ヒトデ・モス・粘土の珊瑚・ペパーミントオイル・レモンオイル・アンバーグリスオイル・オークモスオイル・北見ハッカの結晶・英国草花紋アンティークプレート

まだまだ幼いと思っていた若葉が
いつの間にか成長を遂げ、生き生きと力強く息づいてきました。
大地をうるおす梅雨が過ぎ去れば、
まぶしい初夏の光りにつつまれるのも間近でしょう。
さあ今回は季節を先取りして「潮騒のポプリ」をつくりましょう。
サンゴ砂に貝殻やヒトデ、苔の香りを揉み込んで作った粘土の珊瑚など
海からの贈り物を飾りつければ、
爽やかな香りとともに遠い潮騒の音が聞こえてくることでしょう。

潮騒のポプリの香りには、
刺激的なペパーミントとフレッシュなレモンオイルを基調に
マッコウクジラからとれる動物性香料アンバーグリスを加えました。
オークモスオイル香る手作りの珊瑚飾りからは、ほのかに太古の地球の温もりが漂います。
キラキラとまぶしく輝く水面の煌めきを、北海道・北見の天然ハッカの結晶で表現しました。

「香り貝合わせ」
「香り貝合わせ」
「香り貝合わせ」
(材料)ハマグリ貝・横長アサリ貝・地模様絹着物裂・紅絹・黒絹・白檀・丁子・桂皮・大茴香・龍脳・貝香・零陵香など

幼いころの記憶のひとつに、
砂浜にてんてんと散らばる貝殻をひろいあつめた思い出があるかもしれません。
それぞれの貝のかたちや色合いには不思議なおもむきがあり、
未知の世界へと誘うものでした。

平安時代、宮廷貴族のあいだで流行したあそびのひとつに
「ものあわせ」というものがあります。
絵合わせ、花合わせ、扇あわせ、そして草あわせなど
題材はさまざまに持ち寄ったものにちなんだ和歌をそえてその優劣を競うというものでした。

貝合わせも当初は和歌とともに貝の大きさや美しさ、
種類の豊富さなどを競いましたが、
しだいに対となるハマグリを探すあそびへと発展していきます。
お姫様の婚礼調度品には夫婦の幸せを願って
豪華な装飾がほどこされた一対の貝覆いが用意されました。

それでは、貝に詰めた香りを聞きわけてあそぶ
「香り貝合わせ」をつくりましょう。
二枚貝をきれいに洗い白檀・丁子・大茴香・零陵香など
匂いの強い香料を詰めて絹布でくるみます。
さあ、あなたはいくつ香りを当てることができるでしょうか。

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