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ブログ更新 その75「芙蓉の香莚 ~香と室礼~②」

2017年6月26日  「芙蓉の香莚(こうえん) ~香と室礼~②」

 

 

~菖蒲の間~ 本席「明月軒」

 

書院のある十畳の茶室「明月軒」は、

東北二方向に畳敷きの縁側があり

懐かしいガラス戸で囲まれた風通しの良いユッタリとした空間です。

今回は、この和室で香会を行うこととしました。

 

本席『明月軒』 明月軒の室礼

 

軸「杜若圖」鈴木其一(すずききいつ)筆  

 

お軸は、江戸琳派の画家・鈴木其一の「杜若圖」大幅。

琳派は本阿弥光悦・俵屋宗達に始まり

尾形光琳・乾山の兄弟によって発展、

酒井抱一、鈴木其一へと続いていきます。

鈴木其一は抱一の一番弟子、後継者といわれた絵師で

代表作はアメリカ・メトロポリタン美術館所蔵「朝顔圖屏風」になります。

 

『朝顔図屏風』左隻

 

金の下地に蔓を伸ばして咲き乱れる

群青色の朝顔が描かれた六曲一双の屏風。

青と緑という単純な色使いは、

有名な尾形光琳「杜若圖屏風」に通づるコントラストでしょう。

 

じつは、畠山記念館の収蔵品の中に

鈴木其一の「向日葵圖」大幅軸があります。

 

現在の記念館館長である畠山尚子(ひさこ)さんの著書「伝えたい、美の記憶」には、

館を代表とする美術品の数々とともに

舅にあたる畠山即翁をはじめ

近代数寄者といわれる人々の興味深い逸話がおさめられています。

彼女自身も横浜の三渓園を作られた

益田鈍翁を大伯父にもつ家系に生まれました。

 

その文中にある明月軒の床には、

大幅の向日葵圖のお軸が掛けられています。

 

  「向日葵圖」大幅軸  鈴木其一筆

 

縦長の紙面いっぱいに力強く立ち上がり大きな花を開花させる向日葵の絵、

購入された ご主人畠山清二氏は

夏のエネルギーあふれるこの軸は茶室に合わないかもと思いつつ

そのモダンで大胆な描写に惹かれ求められたとのこと。

 

私は当初、この明月軒の床の間にどのお軸を掛けようか思案していましたが、

飾られている向日葵の掛け軸を拝見したことで

なにがしかの縁を感じ、

同じ大幅の鈴木其一「杜若圖」を飾ることにいたしました。

 

其一の洗練された自由で生き生きとした画風は

その後の近代日本画に大きな影響を与えることになっていきます。 

 

 

 2017-06-06 02.12.02 脇床「五節句・薬玉飾り」 

 

五節句「薬玉飾り」 

 

平安時代、宮中では端午の節句の行事が執り行われました。

貴族たちは冠に菖蒲をつけて出向いたといわれます。

宴が執り行われた後、帰りには帝より菖蒲の薬玉を賜りました。

 

薬玉とは、

菖蒲の葉を編んで丸く仕立てた球体の中に蓬の葉などを詰め、

五色の糸を垂らしたお飾りで、

持ち帰った屋敷では厄除けとして、

秋の菊の薬玉に掛け替えるまで

寝台の柱などに吊るしておく習わしがあったのです。

 

        

2017-06-06 02.12.04

綿を詰め白絹地で縫い上げた野菊の花に金銀色の蝶型金物で装飾

三方に取りつけた菊座カンには、

揚げ巻結びを施した撚り房を垂らし雅に仕上げました。

 

 

脇床の台の上には、

林先生の香道具を収めた乱れ箱と、

江戸時代の図譜を飾ります。

 

2017-06-06 02.11.58 「正倉院・松喰い鶴文様の乱れ箱」

 

 

20160730_125829

公家有職造花木版図譜『懸物圖鏡(かけものずかがみ)』

西村知備(にしむらともなり)著 江戸時代

 

 

2017-06-06 02.11.48

 

この古書は、文化3年(1806年)に表された公家有職造花の総木版摺り図譜で

公家社会での雅なお飾りを鮮やかな色彩の木版刷りで著したものです。

 

有職造花とは、日本のアートフラワーの原点ともいえるもので

大きな特長は薄暗い室内でも生えるように原色を用いることかもしれません。

その精神性の感じられる形態は、陰陽五行・五色に通じているといわれます。

 

雅な雰囲気漂う月々十二カ月の有職造花に、

薬玉そして訶梨勒などが紹介されている美しい図譜を

どうぞご覧ください。

 

それでは次に『芙蓉の間』の室礼を見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年6月27日 up date
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