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ブログ更新その79 「松迎えの風習~松竹梅の迎春飾り~1」

2017年11月17日

 

11月も半ばを過ぎ、

今年もあとひと月半ばかりとなりました。

12月にはいると何かと慌ただしく感じられることでしょう。

 

新年の欠かせない植物「松」。

日本人が松に特別の思いを抱くのは

どの様な歴史からなのでしょうか。

 

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今回は、

松飾りの由来を学ぶとともに

日本の新年を彩る迎春飾りを制作していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

松迎えの風習       

 

新しい年の幕開けは実にすがすがしく、

誰もが心新たな気持ちになることでしょう。

 

町を歩けば綺麗に清められた家々の玄関に常盤木の松が飾られ、

今年一年の豊作と家族の幸せを願う気持ちが伝わってきます。

 

慶事に欠かせない植物『松竹梅』の柱といえる松は、

強く清涼なる芳香とともに

凛として気高いオーラを発する特別な植物といえるでしょう。

 

 

  『歳寒三友』図 13世紀中国

 

歳寒三友(さいかんのさんゆう)

 

「歳寒三友」であらわされる松竹梅とは、

宋代の文人に好まれた画題のひとつで、

厳しい状況でも節度を守り清廉潔白に

そして豊かに生きるという文人の理想を現しています。

 

極寒にも色あせない松、

しなやかにしなる竹、

百花にさきがけ寒中に蕾ほころぶ梅の花。

 

松竹梅という植物に託された「歳寒三友」とは、

孔子の「論語」にある教えから生まれました。

 

 

~益者三友・損者三友~

 

・・・ためになる友には三通り、ためにならない友にも三通りある。

 

自分がどう思われようとも直言をしてくれる友、

心に誠がある友、

物事を深く知っている友、

これらの友人は自分を成長させてくれる人物である故

さらに親交をあたためると良いであろう。

 

反対に人に良く思われることを第一とする友、

人当たりは良いが本心ではない友、

口だけ達者で美辞麗句を述べるだけの友、

これらの友人は自分のためにならず・・・

 

厳しい状況の時にこそ大切にすべき友の姿を説いた「歳寒三友」の思想は、

平安時代に日本へと伝わり

江戸期には民衆にまで広く浸透していきました。

 

やがて教えをあらわす植物として描かれた松竹梅は、

めでたさの象徴となり

正月や婚礼などの慶事になくてはならないものとして

絵画・染め物・楽曲など多くの分野に取り入れられていくのでした。

 

 

松迎えの風習

 

正月に飾る松を山に取りに行く行事を

「松迎え」といいます。

 

 

その昔は12月13日におこなわれ、

この日ばかりは神聖な山に入って樹を切ることが許されていました。

 

新年に訪れるという歳神様は、

一年の豊作と家族の幸せをもたらしてくださる

ありがたい神様です。

 

その歳神様の降臨する依代として飾られるのようになったのが門松で、

家の戸口に松を飾るという行いの歴史は古く、

平安時代末にはすでに始まり

鎌倉時代になると松と竹をあわせた

立派な門松が作られるようになっていきました。

 

 

松という名称は

「祀る」・「神々が降りてくるのを待つ」を

語源とするという説がありますが、

その威風堂々とした風格あふれる存在感は

他の植物にはない特別なものといえるでしょう。

 

仏教が伝来する以前から日本人は、

自然の中に神は存在すると信じてきました。

 

四季豊かな日本列島に育まれた自然は、

私たちに大きな恵みをもたらしてくれます。

 

が、時として激しく荒れ狂い

恐ろしい厄災を引き起こすことも少なくありません。

 

故に古代人が何か事あるたびに、

その力の偉大さを感じそこに神の姿を見出したのも理解できることでしょう。

 

 

本来、神とは姿をもたず又、

ひとところに定着するものではないと考えられてきました。

 

天より降臨した神霊は、

鎮座する巨岩や樹齢を重ねた樹木など

様々な物体である依代を媒体として宿るのです。

 

老松の風格溢れる幹肌、

グッと力強く伸びる枝振り、

冬でも枯れず青々とした葉を茂らす生命力は、

じつに神秘的であり時に霊的であるとも感じられたことでしょう。

 

こうして”松”は

植物の中でも特別な存在として神聖視されてきたのです。

 

 

【影向の松(ようごうのまつ)】

 

 Wikipediaより

 

奈良県春日大社の一の鳥居をくぐった右参道脇に、

枯死した黒松の切り株が祀られています。

 

この松こそ藤原氏の氏神である春日大明神が

翁に姿を変え降臨したと伝えられる「影向の松」なのです。

 

春日大明神の霊験が記された『春日権現霊験記』1309年には、

翁に姿を変えた神が

「万歳楽(まんざいらく)」を舞ったと記されています。

 

この「万歳楽」とは

唐の時代の賢王が国を治めるとき、

どこからともなく鳳凰が飛来し

「賢王万歳」とさえずった、

という逸話から創作された舞で、

才知と徳をあわせもつ立派な君主を称えるおめでたい楽曲として、

現在でも即位大礼の儀などの折に

鳥兜をかぶった演者により奉納されるで舞楽です。

 

 

桧で作られる能舞台正面の鏡板に、

立派な老松が描かれているのをご存知のことでしょう。

 

この松は春日の「影向の松」をあらわしています。

 

もともと能は

野外の大木のもとで行われるものでした。 

 

 

が、時代とともに舞台は室内へと取り込まれ現代の様式へと完成されていきました。

 

能舞台の鏡板に松を描いた最初の人物は豊臣秀吉だったと伝えれます。

 

大変能が好きだった秀吉は、

隠居城として築いた桃山城の能舞台に

影向の松を描いて自ら舞い

そしてこの城で波乱万丈の最期を遂げるのです。

 

 

亡霊や生霊が登場し

「この世とあの世を行き来する芸能」

ともいわれる能は、

神の依代となった老松のもとで演じることで、

神秘的な大自然に抱かれ生きる

小さな人間に思いを馳せる、

日本独特の文化といえるでしょう。

 

 

2017年11月17日 up date

ブログ更新 その77「押型印香~和香餅(わこうべい)~」

2017年9月

 

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押型印香「和香餅」です。

それぞれの文様は古い干菓子の木型より写し取りました。

職人さんの技が際立つ、何とも趣あふれるデザインですね。

 

上よりザクロ・蓮・橘?でしょうか。

 

試行錯誤を繰り返し、

どうにか綺麗に写し取ることができました。

焚くのがもったいないような気分です。

 

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~印香~ 

 

半生状の薫物「練香」に対し「印香」とは、

良く乾燥させた薫物をさします。

粉末状の香料を練り合わせて板状にした後に

梅や桜などに型抜きして乾燥させたもので、

色付けされたものもあり目で見ても楽しいお香といえるでしょう。

 

練香そして印香ともに熱灰で空焚き(そらだき)することを基本とするお香です。

 

中国の香りの古典書『香乗(こうじょう)』1641年の一節に

「黒香餅(くろこうべい)」「黄香餅(おうこうべい)」という香名が登場しますが、

この香餅こそ現在販売されている印香の起源といえるでしょう。

 

日本の記述に初めてこの名が登場するのは、

明との交流が盛んだった琉球王国でした。

中国で作られたものか琉球で制作されたものかは判明していませんが、

琉球より江戸城へと献上された目録にこの香餅の名が記されており、

その期間は1644年から200年に渡り献上され続けます。

 

明の文人にことのほか愛されたという香餅は、

日本の将軍にとって大変珍しく貴重なものだったといえるでしょう。

 

印香は練香にくらべ香りの含みはやや浅くなりますが、

姿形に変化があり楽しいお香といえるでしょう。

 

 

~和香餅(わこうべい)~

 

それでは自ら香料を調合し、

オリジナルの印香「和香餅」を制作してみましょう。

白檀や桂皮など天然の素材だけで練り上げたお香は、

優しく心地よい芳香を放ちます。

 

通常の印香は1センチ角が基本です。

今回のように大きなものは割ってお使いください。

 

金沢の金箔で化粧をほどこして華やかに仕上げました。  

どうぞ贈答用などにも喜ばれることでしょう。

 

『布香包み』

貴重な香木を包み保管するための香包み

 

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料紙などの美しい和紙で制作される香包みを、

丸紋八曜菊の有職文様裂を用いて制作しました。

裏面には軸の表装などに用いられる和紙を使っています。

 

 

 

 

さらにこれらは、

お料理の型抜きをもちいて可愛らしい印香もつくりましょう。

桜の花びらは五弁集めることで一輪のお花になりますね。

 

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金の雲たなびく富士山のうえには三日月さん、

銀杏に瓢、コーンタイプのお香も作りましょう。

 

 

 

 

 

 

2017年10月07日 up date

その68「静岡SBS学苑で香りの講習会してきました」

 

2016年10月22日

 

綺麗に晴れ渡った10月22日土曜日、

今日は静岡で香りの講習会です。

私は品川から新幹線で静岡へとむかいました。

 

本当に近いものですね。1時間もしないで静岡駅に到着。

今回の企画を紹介してくださった玲子さんのお車でSBS学苑の藤枝校へと赴きます。

 

 

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皆様と制作した「折据型(おりすえがた)香包み」と「鶴の香包み」。

格調ある檀紙と2種類の美しい和紙を用いて華やかに作ります。

 

二時間の講習でどのように香りの奥深さをお伝えできるか

いつも一生懸命考えてプランを練ります。

 

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檀紙・紅の奉書紙・蔦文様の鳥の子和紙に紅白水引

手前には調合前の白檀粉を整え準備完了です。

 

室礼の作品も10点ほど展示しました。

 

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それではお時間になりましたのでレッスンを初めてまいりましょう。

 

香りは目に見えないものですので

判りやすいよう画像を見ていただきながらお話を進めていきます。

 

どの様に日本に香りの文化が生まれ、

日本人の繊細な感性のなか発展していったのか

仏教や正倉院の宝物そし源氏物語などから読み解いていきます。

 

さらに動物から得られるジャ香や砂漠で生まれる乳香など

珍しい香料もご紹介。

香りの世界は本当に豊かですね。

 

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1時間余りの講義を終え、次に実習にはいりましょう。

まず2種類の折形の練習をしてから、本番の和紙で折っていただきます。

 

 

 

 

 

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和紙の中には歴史ある日本の香料を詰めて、飾っても美しい香包みに仕上げます。

白檀の粉末に特長ある五種類の香料を自分好みに調合していただきましょう。

 

桂皮・丁子・甘松・貝香そして龍脳

古来から使われてきた渡来の香料は

それぞれ甘み・辛み・苦味・酸味そして爽やかさなど特徴あふれる芳香を放ちます。

 

スッと嗅いだ時に「これ好きです」「なんだか懐かしい」「苦手かな」などなど

皆さまより様々な印象が飛び交います。

 

直感的に感じたご自分の感性大切に、分量を量り調合していきましょう。

 

香料の調合とは人間関係と同じようなもの。

 

良い香りばかり合わせても決して趣きあふれる芳香にはなりません。

クセのある、困ったような香料を少量加えることで

何とも深く心に響く香りに仕上がるのです。

 

 

 

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あっという間に時間がたち、終了の時となりました。

皆さまより拍手を頂き、なんだか恥ずかしいような気持ちです。

 

これからも、語られることの少ない香りの世界を多くの人々に知っていただきたく

目で見ても美しい伝統的な室礼もご紹介しながら、判りやすく楽しいレッスンをしていきたいと思います。

 

お忙しい中、SBS学苑のチーフである海野さんもレッスンに参加していただき

本当にありがとうございました。

 

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著書もお買い求めいただきました。下手なサインですみません。

 

 

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静岡の生徒さんは皆さま温かく、感性豊かにそして好奇心も非常に強いように感じました。

中央にいらっしゃいます玲子さま、大変お世話になりました。

小さい体に溢れるアイデアと人をひきつける不思議な魅力お持ちの方です。

 

様々なご縁のお蔭でこのような機会をもうけることができました。

感謝の気持ちを精一杯努めることで表すことが、わたしの使命と考えています。

 

皆さま、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

宮沢敏子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年10月25日 up date

その64「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・重陽

2016年4月30日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

 

 

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある

という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する

という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。

 

知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

 

季節を大切に過ごす

日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

 

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを

ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

 

 

九月九日(重陽・ちょうよう)

九という陽の数字が二つ並ぶ

おめでたい重陽の節句には、

菊花を飾り、

花びらを浮かべた菊酒を飲み、

綿を被せて一晩置いた菊の露で肌をぬぐ う

などして長寿を祈ります。

菊のお酒

奈良時代にもたらされた菊の花は、

中国では梅・竹・蘭と共に四君子として敬われていました。

「菊花のポプリ」

菊花のポプリ

菊の花は大変に乾きにくいお花です。

花びらをばらして

重ならないように紙の上に広げ、

温風器の前やコタツの中を利用して乾かすと良いでしょう。
ハッカやセージは

軽くもんで香りをたて

丁子と八角は乳鉢であらく砕いて調合し、

密閉した状態で1~2週間ほど冷暗所で熟成させ

それぞれの香りをなじませます。

すべての香りが混じり合い

香りがひとつに調和しましたら、

お気に入りの器に盛り付け、

紅葉や赤い実などを飾って

菊花の咲き乱れる秋の日を演出してみましょう。
菊は花葉ともに薫り高い植物ですので

あえて香りのオイルは加えずに仕上げ、

古代中国の時代から愛されてきた

菊本来の清らかな香りを楽しむことにいたしましょう。 

 有職飾り「錦秋の薬玉」

 有職飾り風・錦秋の薬玉  

大輪の菊に

赤もみじ・黄色イチョウ

そしてススキや小菊など

季節を彩る草花を合わせ、

淡路結びをほどこした六色の組紐で構成した薬玉飾り。

紐はスゥッと長く下へと垂れ下がり、

床になびく様が大変優雅でしょう。有職飾り風・錦秋の薬玉

普段なかなか目にすることのない有職飾りを、

ぜひ暮らしに取り入れて欲しいという思いから

製作してみました。

その色彩は極彩に近いもので構成され

また、陰陽道とも深く結びつき独特の美しさを放っています。

 重陽の節句飾り 「茱萸嚢(しゅゆのう)」

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古代中国では

9月9日の重陽節に、

実のついた山茱萸の枝を頭に挿して小高い山に登り、

気持ち良い秋の風に吹かれながら

菊酒を飲んで災いを払う風習がありました。

これが日本へと伝わり、

奈良平安時代の宮中では

菊花と赤い実をつけた山茱萸の造花を

“あわじ結び”を施した美しい袋に飾る

『茱萸嚢』が作られ、

翌年の端午の節句の薬玉飾りと

掛け替えるまで

自邸の御帳台の柱に吊るし魔除けとしました。

茱萸嚢の中には

乾燥した“呉茱萸/ごしゅゆ”の実をおさめます。

ピリッとした独特の強い芳香には

虫を遠ざけ毒を消し去る力が秘められおり、

辛みが強い程に良品といわれ

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邪気や病い・湿気までを取り除く力が

みなぎっているとされています。

 

 「寒椿の香袋」

寒椿の香袋

日本の全土に自生する椿の花は、

その昔ヨーロッパへと渡り

エキゾチックな“東洋の薔薇”と称されました。

フランスの小説家デュマの綴った『椿姫』は、

高価な椿を毎日取り寄せ飾った

美しい娼婦マルグリットの悲しい恋の物語です。

青年アルマンの真実の愛に気付くも

不治の病にかかり、

椿の花がポトリと地面に落ちるように

その美の絶頂で息絶えたマルグリット・・・。

彼女の髪に飾られた東洋の薔薇をイメージし、

白檀をベースに

オールドローズの香りを合わせて

椿香の香りといたしましょう

 「五穀豊穣の稲穂飾り」 

 五穀豊穣の稲穂飾り

11月23日に執り行われる「新嘗祭」は、

その年に収穫された穀物に感謝を込めて

神様にお供えをし、

天皇自らも新穀をはじめて口にされる宮中行事です。

農耕民族である日本の稲作は、

縄文時代からはじまりました。

お米は精霊が宿る神聖な穀物として、

日本人の精神に特別な思いを持って

刻み込まれていくことになります。

今年収穫された稲穂と榊葉をもちいて

「五穀豊穣の稲穂飾り」を製作しましょう。

重たげに穂を垂れる稲を

一本一本清めていくと、

どこか懐かしいような稲藁の匂いにつつまれ、

幼い日に父の田舎で遊んだお米の収穫の風景がよみがえってきます。

パンやスパゲッティなどが

食卓に並ぶようになり、

毎日食することのなくなったお米ですが、

旅先の車中からながめる田んぼの風景は

いつも私の心を和ませてくれます。

爽やかな5月の風に揺れる水面の早苗、

天に向かって伸びゆく初夏の若草、

重たげに穂を垂れ実りにさえずる雀たち、

そして収穫の後の静まり返った田の風景。

季節とともに変わりゆく

その風景に触れるたび、

自然の摂理がかくも正しく巡回しているように感じ

心は安堵するのでしょう。

日本の原風景といえる稲田は、

これからどうなっていくのでしょうか。

できることならば未来の子供たちとも

この感慨を共有したいものと願います・・・。

 

2016年05月07日 up date

その63「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・七夕

2016年4月26日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

 

 

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある

という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する

という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。

 

知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

 

季節を大切に過ごす

日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

 

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを

ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

 

 

七月七日(七夕・しちえ)

七夕は、

牽牛星が天の川を渡り

一年に一度織姫星に会うという中国の伝説が、

日本の棚織姫の信仰と交じり合いできた星祭り。

夜空を眺めて梶の葉に歌をしたためたり、

庭に並べた棚にお供えをし

五色の糸を張るなどして機織や手芸の上達を祈るお祭りです。

「潮騒のポプリ」

潮騒のポプリ

まだまだ幼いと思っていた若葉が

いつの間にか成長を遂げ、

生き生きと力強く息づいてきました。

大地をうるおす梅雨が過ぎ去れば、

まぶしい初夏の光りにつつまれるのも間近でしょう。

さあ今回は季節を先どりして

「潮騒のポプリ」をつくりましょう。

貝殻や砂に苔の香りを揉み込んで作った粘土の珊瑚など

海からの贈り物を飾りつければ、

爽やかな香りとともに遠い潮騒の音が聞こえてくることでしょう・・・。

「香り貝合わせ」

 香り貝合わせ 

幼いころの記憶のひとつに、

砂浜にてんてんと散らばる貝殻をひろいあつめた

思い出があるかもしれません。

それぞれの貝のかたちや色合いには

不思議なおもむきがあり、

未知の世界へと誘うものでした。

平安時代、

宮廷貴族のあいだで流行したあそびのひとつに

「ものあわせ」というものがあります。

絵合わせ、花合わせ、扇あわせ

そして草あわせなど題材はさまざまに、

持ち寄ったものにちなんだ和歌をそえて

その優劣を競うというものでした。

貝合わせも

当初は和歌とともに貝の大きさや美しさ

種類の豊富さなどを競いましたが、

しだいに対となるハマグリを探す

あそびへと発展していきます。

お姫様の婚礼調度品には、

夫婦の幸せを願って

豪華な装飾がほどこされた一対の貝覆いが用意されました。

それでは、貝に詰めた香りを聞きわけてあそぶ

「香り貝合わせ」をつくりましょう。

二枚貝をきれいに洗い、

二つずつ匂いの強い香料を詰めて絹布でくるみます。

さあ、あなたはいくつ香りを当てることができるでしょうか。

「蝉の訶梨勒」

蝉の言可梨勒(かりろく)

その昔、

幻といわれた訶梨勒の実は、

スッとしたニッキのような芳香をそなえていますが、

香料としてだけでなく薬としての価値も高いものでした。

光明皇后が

亡き夫・聖武天皇の冥福を願い

正倉院におさめた数々の御物の中にも

その名は記載されており、

平安時代栄華を謳歌した

藤原道長も服用したと伝えられる訶梨勒は

「一切風病の治療薬」として万病に処方されました。
 

今回は吉祥の文様でもある

蝉をかたどった装飾掛香に、

訶梨勒の実と伝統的な香料を調合しておさめます。

複雑に絡み合うそれぞれの香りは、

やがてひとつの完成された芳香を放ち

雅やかな室礼となることでしょう。

 「蓮の実のポプリ」  

蓮の実のポプリ

「蓮の実のポプリ」には、

終わりを告げ

来世へと命をつなげた植物を集めて盛り付けましょう。

キラキラと水面を揺らす陽の光のように美しい龍脳は、

天上の花にふさわしい蓮に寄り添うようにして香りを放ち

静かにその生涯を讃えます。

龍脳とは、

龍脳木からとれる白い結晶で

スッと頭上へと抜けるような清涼感あふれる芳香と

高い防虫効果から香袋には欠かせない材料といえるでしょう。

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お料理のように中高に

そして立体的に蓮の実のポプリを盛り付けましょう。

ともにしつらえたお軸は、

平安時代に写経された泉福寺「装飾華厳経切」です。

このお軸との出会いは父が亡くなったときでした。

父の葬儀の時、

古物を扱っている義兄がそっと飾ってくれたのです。

私の心が現世を去り天へと召した父へと

向かっていたからでしょうか。

連なる端正な文字を眺めていると

何とも表現しがたい美しさに心が引き込まれます。

それ以後このお経が私の心から離れることはありませんでした。

一年を経たころ

父の供養にぜひ写経を飾りたいと思い立ち相談したところ、

このお軸を譲ってくれたのです。

それからこのお軸は

私の無二の宝物となりました。

蓮のポプリとともにしつらえると、

香りとともに

目を伏せ静かに微笑む

頑固で一途だった父の面影が思い出されます。

 

2016年05月07日 up date
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