雪月花
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ブログ更新 その87「タイサンボクの花」

2018年6月21日

 

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今日は夏至の日。

一年で一番、日が長い日。

 

梅雨の晴れ間となったこの日

サーと目に飛び込んできたタイサンボクの花。

 

 

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それは見事に厚い花ビラをユッタリと広げ

二輪寄り添うように咲いていました。

 

別名「マグノリア」というこの花はモクレン科の植物で

初夏の訪れとともに高貴な芳香を放ちながら開花します。

 

花言葉は人生の展望が開けていくさまをあらわした「前途洋洋」。

 

その花言葉にふさわしいかのように

堂々と正面を見据えているかのような凛とした花姿は

気品に溢れ見るものを魅了してやみません。

 

なにかとても良い出会いをしたような

 

そんな気持ちにさせられる一日となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年06月25日 up date

ブログ更新 その85「受け継がれる日本の暮らし~包む~1」

2018年4月

 

受け継がれる日本の暮らし ~包む~ ①

 

~日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の火打ち袋~

袋物の歴史をさかのぼっていくと、

「古事記」の中にすでに登場していますのでご紹介しましょう。

 

大和国の帝の子として生まれたヤマトタケルノミコトは、

ある日父が妻に迎えようと考えていた姫を

自分の妻にしてしまった兄のもとに行くよう命ぜられます。

諭すだけで良かったものを武勇に秀で激しい気性をもっていたヤマトタケルは、

いきおい兄の手足をもぎり厠に投げ込んで殺してしまうのでした。

そのことを知った帝は彼の力を恐れるばかりか忌み嫌うようになり、

東国征伐の命を授けます。

 

大和の国に従わない僻地へと征伐に赴くことは、

死罪にも等しい仕打ちでした。

愛する父への思慕が深かったヤマトタケルは、

このむごい扱いに苦しみ嘆きます。

彼の悲しみを知った叔母の倭姫(ヤマトヒメ)は、

苛酷な旅へとむかう彼を慰め伊勢の神宝である“剣”と小さな“袋”を与えるのでした。

 

旅立った敵地で言葉たくみに誘い出されたヤマトタケルは、

草原で火責めにあい窮地にたたされます。

 

 

 「ヤマトタケル」 歌川国芳版画 江戸時代 wikipediaより

 

そこで叔母より授かった剣を抜いて周りの草を刈り、

剣の根元に結んでおいた袋から火打石を取り出して新たな火をおこし

敵の火勢を押し返して難を逃れるのでした。

 

 

この一件からヤマトタケルの剣は“草薙の剣”と呼ばれ、

現代まで皇室に脈々と続く三種の神器の一つとなるのですが、

この剣と火打ち袋を手渡されたおかげで彼は命を永らえることができたのです。

 

この「古事記」の物語にあやかり、

戦国時代の戦に旅立つ武士達はお守りとして必ず

家伝の火打ち袋を携えていったと伝えられます。

 

~火打ち袋~

マッチやライターなどの便利な火付け道具がまだなかった江戸時代、

行軍や旅路へとむかう人々が大切に携えていったのは“火打ち袋”でした。

袋の中には、火打ち金・火打石

そして火口(ほくち)となるガマやカヤ(白い綿毛をつけるイネ科の多年草)の穂などがおさめられ、

鋼鉄の火打ち金と硬い石を打ち合わせることで

飛び散る火花を植物の綿毛に移して火をおこす仕組みです。

 

マッチが日本で初めて作られるようになったのは、

明治維新によって鎖国が解かれた後の明治8年だったといわれていますので、

人々にとって火を生み出す火打ち道具は

じつに大切なものだったことでしょう。

 

当時の男性は、錦や唐木綿・更紗・ビロードなどの布地のほか、

革や籐製など様々な素材を用いて袋を製作しました。

火打ち袋は、袋を綴じる紐の先端に根付をつけ

腰紐に通しぶら下げるようにして身につけますが、

 

象牙や黒檀・柘植製の根付には粋な彫刻がほどこされ、

当時の男性の美学がこめられるようになります。

 

 

復元された 「今川義元の火打ち袋」

復元された今川義元の火打ち袋

「嚢物(ふくろもの)の世界」平野英夫著より

 

 

復元された駿河(静岡県)の戦国武将・今川義元が所蔵していたといわれる火打ち袋は、

白いなめし革製で緒締めには古墳時代の管玉が、

根付には象牙か動物の骨と思われる当時流行した丸環が使用されています。

さすが後世に名を残す武将だけあり、

大変に趣味の良いデザインですね。

 

またこの袋表には、

漆で和歌が一首と平安時代の歌人であり三十六歌仙の一人でもあった源公忠(みなもとのきんただ)朝臣の名前が書かれています。

 

 

~火打ち袋の香袋~

 

火打ち袋の香袋

「火打ち袋の香袋」 宮沢敏子制作

江戸時代の「火打ち袋」の意匠を復元し

香袋として製作してみましょう。

表地には丁子を何度も染め重ねた“香色”の裂地を、

中布には淡い水色の絹を用いて仕立てます。

江戸時代に流行した赤味をふくんだ茶色の紐を“封じ結び”で飾り、

可愛らしいツゲ製の片折れ耳ウサギの根付と

トロンとした緑色の輝きが魅惑的な翡翠玉を緒締めに用いています。

 

 

香材料

排草香  10グラム

丁子   小匙半分

桂皮   小匙1

龍脳   ひとつまみ

中に詰める香料の主材料に選んだのは中国原産の“排草香(はいそうこう)”とよばれる植物で、

とくに根の部分に高い香気を抱いています。

細かい根がからみあう土混じりの香料をほぐしていると、

力強い大地の香りに包まれます。

その芳香は、香木のような落ち着きのなかにもスッとした清涼感が感じられ、

足元にある土の中にこんな神秘的な香りが秘められていることに驚かされることでしょう。

この香料は、匂い袋のほか粉末にして練り香やお線香の材料としても使われています。

排草香(はいそうこう) 拝草香

 

それでは香料を調合していきましょう。

短くカットした排草香に、

乳鉢で砕いた丁子と

和製シナモンともいわれ甘みの中にピリッとした辛みを含む桂皮をあわせ、

最後に防虫効果の高い龍脳の結晶を加えます。

 

それぞれの個性ある香りがお互いを引き立てあい、

たくましくも心地良い芳香に仕上がりました。

 

 

 

 

 

2018年04月15日 up date

ブログ更新 その83「桜物語3 ~舞い散る桜の香り花びら~」

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2018年2月

舞い散る桜の香り花びら

日本の春の訪れは、

人々に季節の移り変わりを最も印象深く感じさせる時といえるでしょう。

窓辺を照らす光の明るさ、

柔らかい新芽をのぞかせる樹々の梢、

地面に寄り添うように花開く早春花、

何もかもが冬の眠りから目覚め静かにうごき初めます。

そんな春の喜びを桜の花びらに託して飾りましょう。

白い粘土に桜の香りを練りこんで

可憐な香り花びらをつくります。

白い桜も気品あふれ素敵ですが、

赤を少し加えると優しい桜色なるでしょう。

西行法師の愛した吉野の舞い散る桜のように、

ヒラヒラと塗り盆やたたらの器などに飾りましょう。

また和紙に包んでプレゼントしたりお手紙に忍ばせても素敵ですね。

桜の樹の下に立つとつつまれる、

桜独特の“クマリン”のなんとも優しく穏やかな香りが漂います。

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材料    石粉粘土        適宜

      桜のオイル       1滴

      染料(赤)      お好みで1~2滴

      その他 アクリル板の桜型・ワックスペーパー・麺棒・型切りなど

 

作り方

①香りのついた桜の花びらを作るには、最初にお好みの桜の花びら型をアクリル板で切り抜いておきます。

②粘土を少し取り桜のオイルを練り込みましょう。

③さらに染料を直接垂らして粘土の内側に練りこむようにして色付けし、

ほどよい混ざり具合でストップしてください。

④麺棒で薄くのばし桜型を当てて切りとします。

⑤丁寧にはがして手に取り、

花ビラの芯の部分を摘みさらに全体を優しくよじるようにひねって形を整え乾燥させましょう。

 

※作業はワックスペーパーのうえで行うと、はがす時に綺麗にはがせ作業がしやすいでしょう。

花ビラに少しひねりを加えておくと優美な感じに仕上がります。

また、粘土は薄く成型するほどに繊細な花びらになりますので、ぜひとも挑戦してみてください。

 

可愛らしいピンクの桜・大人っぽい白い桜・妖艶な薄墨桜、あなたはどの様な桜がお好きでしょうか・・・。

 

 

 

 

桜のお酒

 

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桜茶に使われる桜の塩漬けを用いて、

春の日の祝い酒をつくりましょう。

枝先の桜が風に吹かれユラユラとなびくかのような花びら酒、

口に含むとほんのりと香りたち

心まで桜色に染めてくれかのようですね。

 

 

 

 

桜ゼリー・桜ジンジャエールなども美味ですが、

私のおすすめはシンプルなお湯割りです。

 

まだまだ寒い季節、熱いお湯を注いだ香り高い桜酒で、

やさしく身体を温めてください。

 

2018年02月09日 up date

ブログ更新 その77「押型印香~和香餅(わこうべい)~」

2017年9月

 

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押型印香「和香餅」です。

それぞれの文様は古い干菓子の木型より写し取りました。

職人さんの技が際立つ、何とも趣あふれるデザインですね。

 

上よりザクロ・蓮・橘?でしょうか。

 

試行錯誤を繰り返し、

どうにか綺麗に写し取ることができました。

焚くのがもったいないような気分です。

 

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~印香~ 

 

半生状の薫物「練香」に対し「印香」とは、

良く乾燥させた薫物をさします。

粉末状の香料を練り合わせて板状にした後に

梅や桜などに型抜きして乾燥させたもので、

色付けされたものもあり目で見ても楽しいお香といえるでしょう。

 

練香そして印香ともに熱灰で空焚き(そらだき)することを基本とするお香です。

 

中国の香りの古典書『香乗(こうじょう)』1641年の一節に

「黒香餅(くろこうべい)」「黄香餅(おうこうべい)」という香名が登場しますが、

この香餅こそ現在販売されている印香の起源といえるでしょう。

 

日本の記述に初めてこの名が登場するのは、

明との交流が盛んだった琉球王国でした。

中国で作られたものか琉球で制作されたものかは判明していませんが、

琉球より江戸城へと献上された目録にこの香餅の名が記されており、

その期間は1644年から200年に渡り献上され続けます。

 

明の文人にことのほか愛されたという香餅は、

日本の将軍にとって大変珍しく貴重なものだったといえるでしょう。

 

印香は練香にくらべ香りの含みはやや浅くなりますが、

姿形に変化があり楽しいお香といえるでしょう。

 

 

~和香餅(わこうべい)~

 

それでは自ら香料を調合し、

オリジナルの印香「和香餅」を制作してみましょう。

白檀や桂皮など天然の素材だけで練り上げたお香は、

優しく心地よい芳香を放ちます。

 

通常の印香は1センチ角が基本です。

今回のように大きなものは割ってお使いください。

 

金沢の金箔で化粧をほどこして華やかに仕上げました。  

どうぞ贈答用などにも喜ばれることでしょう。

 

『布香包み』

貴重な香木を包み保管するための香包み

 

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料紙などの美しい和紙で制作される香包みを、

丸紋八曜菊の有職文様裂を用いて制作しました。

裏面には軸の表装などに用いられる和紙を使っています。

 

 

 

 

さらにこれらは、

お料理の型抜きをもちいて可愛らしい印香もつくりましょう。

桜の花びらは五弁集めることで一輪のお花になりますね。

 

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金の雲たなびく富士山のうえには三日月さん、

銀杏に瓢、コーンタイプのお香も作りましょう。

 

 

 

 

 

 

2017年10月07日 up date

ブログ更新 その76「芙蓉の香莚 ~香と室礼~③」

2017年6月28日    「芙蓉の香莚 ~香と室礼~③」

 

 

~芙蓉の間~ 和室 点心席

 

『蝶芙蓉』掛け軸狩野探幽

 

切支丹花十字紋・四季花鳥圖香箪笥 

 

正倉院の香料

「黒漆螺鈿装飾春日卓・切支丹花十字紋香箪笥・正倉院の香料」

 

「長崎サント・ドミンゴ教会の花十字紋瓦」 サント・ドミンゴ教会跡資料館より

 

サント・ドミンゴ教会は、

スペインのドミニコ修道会の神父フンシス・デ・モラーレスによって

1604年長崎県長崎市に建てられた教会です。

時の将軍徳川家康は、当初キリスト教の信仰を黙認していましたが、

その信仰が拡大するにつれ、

1612年に禁教令そして宣教師国外追放を発令するにいたります。

この措置により徐々にキリシタン迫害は厳しいものになっていくのでした。

 

1614年になると長崎のほとんどの教会は破壊され、

さらに潜伏キリシタンの摘発、処刑がおこなわれました。

サント・ドミンゴ教会も壊され、跡地には代官屋敷が建てられます。

 

2002年、市立桜町小学校の敷地となっていたこの場所で

校舎建て替え工事による発掘調査によって教会の遺跡が発見

花十字紋が刻印された瓦も見つかったのです。

 

 

 

 

「花十字紋が外面に描かれた蒔絵香箪笥」

 

厳しい監視体制の中、信仰を捨てず隠れキリシタンとして活動していた人々は、

秘かに集会を開き観音像を聖母マリアに見立てたり

花に十字架をデザインした小さなメダイなどを信仰の対象とし

教えを守り続けたと伝えられます。

 

 マリア観音像(子供を抱く慈母観音)  wikipediaより

 

今回はこの美しい蒔絵香箪笥に、正倉院に伝えられる香料を並べ展示しました。

 

正倉院の香料  

「正倉院の宝物」とは、

奈良時代に崩御された聖武天皇の遺愛品を中心に保存されたものです。

后である光明皇后が、ご供養のため奈良の東大寺に献納されました。

日本の伝統工芸品はもとより

唐の時代の中国文化やインド・ペルシャなどの

美しくエキゾチックなデザインを今日まで伝えています。

注目したいのは、その目録の薬とともに香料が記載されているということでしょう。

 

2017-06-06 02.12.32 「白檀・カリロク・丁子・貝香・八角・匂い菖蒲根」

 

根来銘々皿に盛り付けた六種の香料は、

各人が手に取り香りを嗅いでいただきました。

 

目録「種々薬帳」にある六十種類の薬種

 

仏教伝来にともない神聖な儀式に不可欠なものとして渡来した

沈香・白檀・丁子・桂皮などのさまざまな香料は、

生きるうえでなによりも大切とされた薬と同様に管理されてきました。

なぜならば、神々がことのほか愛する香料植物には

人知の及ばない不思議な力が宿っており、

それらは人の病をも癒すと考えられていたからです。

 

天平時代の香料は、

生薬としての役割も高く大変に貴重なものだったといえるでしょう。

 

 

 

軸「絹本蝶芙蓉圖」 狩野探幽筆 

 

 『蝶芙蓉』掛け軸狩野探幽

 

江戸幕府の御用絵師の中でも、早熟の天才絵師と伝えられる狩野探幽。

江戸城や二条城・名古屋城の障壁画(襖絵)や屏風の他、

京都大徳寺にもたくさんの作品を残していますが、

中でも三十五歳の時に描いたといわれる法堂の天井画「鳴き龍」は、

手をたたくと龍が鳴くように響くとして大変有名です。

 

 

_20170619_213755  軸「絹本蝶芙蓉圖」狩野探幽筆 

 

 

じつは私はこのお軸が大変好きでして、

色合い静かなこの絵を見ると父を思い出すことができるのです。

もう他界しまして十八年たちますが、

お葬儀の時に集う人々を眺めるように

塀の上に蝶がヒラヒラと舞っていまして

八月のお盆に近い暑い盛りでしたので、不思議なことと眺めておりました。

 

蝶は魂の化身ともいわれますが、

なにか見守られているように感じたのです。

 

意図したわけではないのですが、

今回の三点の室礼にはどこかに蝶が隠れていますので、

どうぞ探して見て下さい。

 

 

このお話をしたのち、ある参加者さんから

明月軒の草蔭に黒い大きな蝶が舞っていましたよ。

きっとお父様が見に来られたのではありませんか。

 

というお話を伺い、なんだか胸が熱くなりソッと手を合わせるのでした。

 

 

最後に香会の様子をご覧いただきましょう。

 

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香道研究家の林先生、お着物がとっても素敵ですね。

今回も準備の段階から様々なご助言をいただきました。

 

香の歴史の楽しいお話、組香の丁寧なご指導そして、

貴重な香木まで拝見させていただきまして

本当に心より感謝申し上げます。

 

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ご参加いただきました皆さま

今回はお香二席ともにたくさんの方にお集まりいただきました。

 

風薫る五月を想定していましたが、

当日は初夏を思わせる暑さとなり、

皆さま倒れないかと急遽ペットボトルのお水をお配りしました。

思いがけないことがおこるのですね。

 

色々と至らぬこともあったことと思いますが、

今回の経験をもとにし、またいつの日か

心に残るような思い出深い会を開催できますよう努力してまいります。

 

 

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そしてお手伝いいただきましたスタッフの皆さま。

本当にありがとうございました。

皆さまの細かい心配り大変素晴らしかったです。

 

 

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当初は不安ばかりで眠れない日々をおくっていましたが、

こうして多くの人々に助けられ無事に会を開催できました事

 

本当に嬉しく、心より感謝と御礼を申し上げます。

ありがとうございました。

 

 

 

『香りと室礼文化研究所』 宮沢敏子

 

 

 

 

 

2017年06月28日 up date
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