
2013年10月
11月の香りレッスンで皆さんと製作する匂い袋の準備中です。
きれいに刺繍された薔薇のモチーフをみつけましたので
お見せしましょうね。
なんて美しいのでしょう♥♥
お教室の準備にこのところいろいろな場所に出向きましたが、
このバラ刺繍に出会ったとき
イメージがまたたく間に浮かびがりました。
布地には温かみのあるベルベット
豪華なタッセル飾り
そしてバラの美しさをキラキラと引き立てるガラスやビーズ
英国のヴイクトリアン時代を懐かしむように仕上げましょう。
美しいものがたくさん誕生し
装いも夢のように華やかだった時代です。
こうして準備を進めている時間がなんとも好きで、
みなさんの喜んでくださるお顔を想像しながら手を動かしていると
アッというまに時間が過ぎ去ってしまいます。
今回は、女性に生まれた喜びを中に詰める濃厚な薔薇の香りとともにお届けしましょう。
どうぞ、お楽しみに・・・・・♥
2013年10月10日
先日、夕食後のお散歩のときに偶然みつけた小さな公園。
滝や石橋など、段差のある空間を上手に演出していてなんて素敵なのでしょう。
思いがけない発見にワクワクと心がはずむような気持ちになりました。
休日の今日、あらためて出かけてみることにしましょう。
水辺の景色がとても涼しげに目に映ります。
スッと背を伸ばしたガマの穂はじょじょに葉先を色付きはじめ
その横には花の香りがおしろいに似ていると言われる花魁草オイランソウが
久しぶりに目にしたこの花はやはりその名にふさわしく妖艶な、
またどこか寂しげな雰囲気をかもしだしているのでした。
小さな深呼吸をして日本の野草を眺めていると
なぜか心が落ち着いてくる感じがします。
家の近くに、こんな素敵な場所があったのですね。
このあたりは高層 マンションが立ち並ぶ
都会の真ん中のような場所なのですが
それゆえポッと現れたこの空間がありがたく感じられるのでしょう。
それではもう少し小さな秋を探しに、
ビルの谷間を花巡りしてみることにしましょう。
紫の気品ある実をつける紫式部
幼い日に摘み取り遊んだイヌタデ
秋陽に輝く金盞花
勢いよく枝を伸ばす秋の七草・紅の萩
可憐ながらもたくましく咲くサルビア
そして秋を待つように銀色に風にゆれる ススキの穂
どの花も、自分に与えられた生をまっとうするかのよう。
何も語らず静かに咲いています。
今日は、こんなにたくさんの輝きに出会うことができました♥
2013年9月8日
菊の節句
もうすぐ、九月九日「重陽の節句」が訪れます。
暑さが少しずつ和らぎはじめると、さまざまな秋便りが届き始めます。
なかでも松茸や栗・葡萄や新米そしてサンマなどの秋魚など美味しい食材も楽しみですね。
そんな秋の食卓に、フワッと薫る菊のお酒をお届けしましょう。
新鮮な菊花の花びらをむしって器に詰め、日本酒をそそぎ
半日ほど置いて菊の芳香が程好くうつったら完成です。
冷たくしてお召し上がりください。
とってもとっても美味しいですよ。
一片の花びらをソッと浮かべてどうぞ・・・。
「菊」というと仏前の花というイメージが強いかもしれませんが、
秋の日の野菊の香る様子はじつに穏やかで、心地よく流れる風に似合います。
その香りは涼やかであり清冽であり、
日本人の精神にも通じる独特の香気を放っているといえるでしょう。
菊には、不思議な霊力が宿っているといわれます。
ここでひとつ、ある物語をご紹介しましょう。
江戸時代後期、大阪の遊郭・曽根崎新地に私生児として生まれた”上田秋成”は、
体の弱い子共で次第に神秘や幻想の世界へと傾倒していきました。
やがて、中国や日本の古典物語にであったことで怪奇短編小説を
「雨月物語」にまとめます。
そのなかの1編、「菊花の約(ちぎり)」には、
自らを刃に伏し、死を呈してまで男同士の約束を果たした物語が綴られています。
孤独を抱えた二人の思いは、菊の花の霊力をもって
究極のかたちへと流れていったのかもしれません・・・。
江戸後期・細身美術館蔵
物語は、旅の途上生死をさまよっていた宗右衛門が、
貧しく実直な学者・丈部左門(はせべさもん)によって助けられることから始まります。
やがて快復していく中で深いつながりを感じた二人は
”義兄弟の約(ちぎり)”を結ぶまでに親交を深めるのでした。
桜の花びらも散り初夏をむかえた頃、
宗右衛門は「菊の節句」に戻ることを約束して故郷へと戻ります。
月日は流れ、やがて約束の九月九日「重陽の節句」。
菊花をかざり酒席の用意を整えた左門ですが、
なかなか彼は姿をあらわしません。
待ちくたびれぼんやりと月夜をながめていると、
ふと黒い人影が佇んでいるのに気づきます。
目を凝らしてみれば、あの宗右衛門がたっているではありませんか。
躍り上がらんばかりに喜んだ左門は、彼を家中へと招き入れるのでした。
じつは故郷へと帰った彼はお城に軟禁されてしまい、
約束を果たせない状況にあったのです。
そこで考えあぐねた宗右衛門は、
「人は一日に千里を行くことはできないが霊魂は一瞬にして千里を行くことができる」
という言い伝えから、
なんと自らを刃に伏し死を呈して左門のもとへとたどり着いたのです。
こうして宗右衛門は命をかけて義兄弟の”菊花の約”を果たしたのでした・・・。
「雨月物語」に描かれた仁義を尽くす男同士の交流は、
清涼なる菊の香りとともに繰り広げられました。
孤独を抱えた二人の思いは、
菊の花の霊力をもって究極のかたちへと流れていったのかもしれません。
菊の花にやどる崇高な精神は、武士の魂と生き様に通じるものがあったのでしょうか。
この物語は、究極のホモセクシャルともいえる男ならではの”美学の象徴”として
今もなを語り継がれているのです。
2013年8月
”蓮のお茶”をご存知でしょうか?
小さな手漕ぎ舟で蓮池を縫うように進み、
蓮の花弁の中に茶葉を詰めてその清らかな芳香を茶葉に移すという
繊細なロータスティは、
数がかぎられたほどにしか生産できない憧れのお茶です。
おもむろに口に含むそのときを夢に描いていましたが、
残念ながら、今回の旅では巡り合うことができませんでした。
幻のお茶は以前幻のままですが、
かならず出会えると信じて、その瞬間を楽しみにいたしましょう。
しかしこの旅で、たいへん美しい蓮の花を写真におさめることができましたので、
ぜひご覧下さい ♥
フワァと剣先が優しいピンクに染まった大輪の花びらは、
ばらつきながらも見事に咲き誇り
まるで太古の様相をはくしたているかのよう
あまりの美しさにウットリ見とれてしまうのでした。
この花は、ジャングルの中を小舟でゆくメコン川クルーズへの帰途に立ち寄った
広大な敷地を持つレストランの蓮池で出会いました。
皇太子さまも訪れたというこのお店は、
お料理も美味で最高でしたが
なにより敷地全体の雰囲気が素晴らしく、
ぜひ訪れていただきたい場所のひとつです。
ホーチミンへと戻り一休み
夕暮れになり
オシャレな通りといわれるバスター通りを歩いていると、
たまたま店先にディスプレイされてあったシフォンのワンピースに目が止まります。
店主は日本の女性でとても美しい方。
様々なお話をして、このあたりに良いレストランはありませんか?
と尋ね紹介していただいたのが、ご主人が経営なさっているという
「 Huong Lai 」
というお店です。
彼女は、ご主人と巡り合ったことでベトナムの地に暮らすことになったとのこと。
人の人生はわからないものですね。
どんなに恋焦がれ、何年もそばにいても結ばれない二人
かと思うと、出会った瞬間に人生を共に歩む相手となることも
ご縁とは本当に不思議なものですね。
などとお話をして、予約をしていただいたご主人のお店へ向かいます。
階段を上りレストランへはいると
ウーン、とても良い感じ
過度な装飾はなく、かといって寂しすぎず
綺麗な風が店内を流れています。
サーと現れたのは店主の臼井氏。
アイロンのきいたストライプのシャツに
背筋の伸びた姿は堅苦しくなく優しげな目元をしています。
彼には大きな志を持つ人が放つオーラのようなものが溢れていました。
素材にこだわったベトナムの家庭料理はもちろん美味しかったですが、
心にとまったのは、他の店では感じることのなかった若いスタッフの方々の表情でした。
人の目を見て丁寧に話す、
その瞳の奥には働くことに対する喜びや誇りが感じられたのです。
お話を伺えば、臼井氏はストリートチルドレンや孤児など経済的に恵まれない子供を
スタッフとしてむかえているとのこと
彼らは自分のお金で教育を受け、仕事を学び、そして巣立っていくのです。
素晴らしいことですね。
日本人が異国で、意義ある活動をなさっていることに深く感動しました。
そして各テーブルには、薫り高いジャスミンの花蕾が
水をたたえた小さな器に 飾られており
気品あふれるその香りは、
まるで彼の清らかな心を表すかのように感じられたのです・・・。