雪月花
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その21 「りんごの香りの瓶詰め」

2014年 4月7日

 

イギリスを旅すると片手で軽く握れるサイズの小さなりんご

クラブアップル” を目にすることでしょう。

街の果物屋さんやバスの休憩所の売店などに

きれいに並べられた 真っ赤な小さなりんご。

 

人々はお水替わりにちょうど良いサイズのこのりんごを

シャリッシャリッとかんでは喉の渇きを潤します。

私もロンドンからオックスフォード、ノーフォークへと北上する旅の途上、

揺られるバスの中で甘酸っぱいこのリンゴをかじり、

その爽やかな香りに浸りながら異国を旅している実感に浸ったものです。

 

 

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そんなりんごの季節も

春の到来とともに終わりへと近づいてきました。

今日は食べきれずに残ったりんごでアップルジェルをつくりましょう。

 

透き通った べっ甲色のジェリー とても綺麗ですね

これはザクザクと、種もすべて丸ごとカットしたりんごをゆっくり3時間ほど火にかけ

一晩かけてガーゼで越してトロリと煮たもの。

りんごのペクチンの働きでゼラチンをいれなくても自然に固まります。

ヨーグルトにかけたり、紅茶に入れたり

リンゴの香りと上品な甘さを閉じ込めたジェリーは

美しいきらめきに生まれ変わりました。

ぜひぜひ、お試し下さい。

 

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このジェルは、大好きな ”ターシャ・テューダー” さんのDVDにも

登場するレシピです。

何か事が行き詰まり、思うように進まない時

私は良くターシャのビデオを流します。

すると、不思議なことに心の曇が少しずつ少しずつ薄まり

ふたたび原点へともどれるように感じるのです。

彼女の心に響くいくつかの言葉をご紹介しましょう。

「・・・時間をかけるということは

それだけたくさんの愛情をそそぐということ・・・・」

「・・・一番のコツは、

近道を探そうとしないこと・・・」

「・・・自分の理想を貫くには

忍耐強く生きること・・・」

56歳でアメリカ・バーモントの田舎の山奥に

18世紀風の家を建てて一人暮らしを始め

見事なナチュラルガーデンをつくりあげたその生き方は、

わたしに多くのことを学ばせてくれるのです。

 

 

 

2014年04月07日 up date

その15 「バリ島の麝香猫コーヒー・2」

 

バリ・カカオ

2014年 1月11日

大きなカカオの実がなっております。

 

じつは、バリ島への旅で思いがけないことがありました。

なんと生きた麝香猫を目にすることができたのです。

ジャコウネコとは、香料の世界で大変貴重な

動物性香料を採取できる4種の動物のうちのひとつで、

もちろん日本には生息しておらず

じっさいに見ることができるなんて想像すらしたことがありませんでした。

思い出しても、とっても興奮してしまいます♥♥♥

 

バリ・フリナー麝香猫

 

 

猫さん檻の中で恨めしそうにこちらを眺めていますね。

 

アーアそんなに見ないでよ

なんて決して幸せそうに見えませんが、

カカオやコーヒーなど栽培しているこの植物園は、

あの世界で一番高価と言われる麝香猫コーヒー

KOPI  LUWAK」(コピ ルアク)の生産元だったのです。

後ほどご紹介しますその作り方を聞かれて

ウッと思われる方もおられるかもしれませんが、

生産量の少ない大変稀少なコーヒーなのです。

 

バリ・麝香コーヒー2           ウーン、香りがまったく違います。

                                        素晴らしい香味

通常のコーヒーと聞き比べをするとよくわかりますが、

鼻の奥から脳へシベットといわれる麝香猫の

神秘的なペースト香

ローストしたコーヒーの心地よい芳香と合い交じり

独特の香りをはなち立ち登ってくるのです。

 

 

バリ・コーヒー豆の餌

 赤い実は、麝香猫が餌としているコーヒー豆

グルメな彼らは、熟した美味な豆しか食しません。

体内に入った豆の種は消化されず、糞と一緒に排出されてくるのですね。

バリ・麝香コーヒー

バリ・コーヒーを炒る

それらをキレイにし、じっくりと煎り、

さらに棒で突いて粉状にしたものが コピ・ルクア です。

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バリでは、カップにコーヒーの粉を直接入れ熱湯を注ぎ

沈むのを待って飲みます。

アララ糞なんて、と思われる方もいるかもしれませんが

1995年には、世界一高価なコーヒーとして

イグノーベル栄養学賞」にも輝きました。

麝香猫の腸内の消化酵素の働きや発酵によって

人を魅了する独特な香味が豆に加わる

本当に貴重な産物なのです。

日本の珈琲専門店でもだされているとうかがいますが

一杯たぶん1500円から5000円程かと思います。

しかし、その品質にはバラつきがあるようです。

もともとは先進国の人々にコーヒー豆を残らずもっていかれ

現地の人々が捨て置かれた麝香猫の糞にまみれた豆を綺麗にして

飲んだことより発見されたといわれる麝香猫コーヒー。

バリ・ジャコウネココーヒー

恐れずに、どうぞお試し下さい。

バリ舞踊

バリ島は、本当にさまざまな顔を見せてくれました。

バリの観光は、一般的に個人で車をチャーターし時間制で案内していただきます。

お世話になりました、わたしたちのガイドさんをぜひご紹介しましょうね。

グラフィックス1

お名前は、通称ウイッキーさんです。

もと免税店でお仕事をしており、現在は観光ガイドのほか車やバイクのレンタルもなさっています。

英語も日本語もとてもお上手ですし、こちらの希望をちゃんとくみ取り案内してくれますよ。

ふたりのお子さんのパパでとても人柄の良い方です。

風邪気味にもかかわらず、深夜までお付き合いいただき本当にありがとうございました

また、ぜひ訪れたいと思っています。

どうぞバリにお越しの際はご連絡ください。

mobile :  +  62  878  626  30379   または +  62   812  398  4930

phone :   + 62  361  2765  108

Email :  tudewicky@yahoo.com

今回、私たちはホテルではなくヴィラというプール付きのコテージに泊まりましたが

周りにはオーストラリアやヨーロッパの家族連れやカップルが

1ヶ月も長期滞在するヴィラが多数ありました。

彼らは、スクーターをレンタルしてビーチに行ったり寺院を巡ったり

また夜の街に繰り出したりと本当に自由気ままに休日を楽しみます。

近所にはイギリス風のパブや欧州のベビーミルクやお菓子の並ぶスーパーなどもあり

日本のお休みと随分違うものと

なんとも羨ましく感じて帰国した次第です。

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最後に、毎朝朝食を作りに来てくれたハンサムさんのお写真を。

バリの人々は、日本人よりも小柄で細く、

はにかんだような笑顔で接っしてくれます。

マスコットの猫さんも自由気ままに歩き回り

足元でおやつをオネダリなどして可愛かったです。

また、朝の目覚めはまるでジャングルの中にいるかのように

さまざまな鳥たちの鳴き声が響き渡るのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014年01月13日 up date

その14 「神々の国 バリ島 ・1」

2014年 1月10日

明けましておめでとうございます。

今年も様々なことを学び、良い作品をお届けできますよう 努力してまいりたいと思います。

皆さまにとりまして、良き一年でありますこと心よりお祈りいたします。

 

わたしは、年末からお正月にかけてバリ島へいってきました。

この島が「神々の国」といわれる、そのゆえんに触れる旅となりましたので 少しお話ししましょう。

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インドネシア・バリ島は、90パーセントがバリ・ヒンズー教徒の人々で

たいへん信仰深い日常をおくっています。

葉っぱで作られた器に盛られたお供えは、毎朝祈りとともに供えられるもの。

各家々にはかならず隣接して自家のお寺が建てられていますので

朝の街並みを通ると色鮮やかな供物がいたるところに目に入ります。

ホテルのフロントや各ヴィラの入口、

そしてなにげない土手や車の行き交う大きな交差点の道路の真中にまで供えられていますが、

あそこにはいったいどうやって置いたのでしょうね。

そうした供物は、やがて崩れバラバラになっていきますが

すべてが自然の植物で作られているため環境を汚すことはありません。

非常にナチュラルですね。

「収入の30%を信仰の為に使うので大変なんですよ」

とガイドのウイッキーさんがおっしゃっていましたが

バリの人々の深い信仰心に守られて

なんだか良い一日を過ごせるような朝のスタートとなりました。

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20131231_150433   村々にはかならず大きな寺院があります。

移動中、ちょうど村の神事に遭遇しました。

愛らしい子供の列を先頭に、頭に供物をのせた人々が続き、

白い布を巻いているのが僧侶の方々と伺いましたが

正装した衣装の色合いがとても綺麗ですね。

 

 

 

 

島内には歴史ある寺院が多数点在しています。

 

それらのなかでひとつ、とても感動的だった寺院史跡をご紹介しましょう。 20131231_101415

オットと一緒の写真しかないので、少し恥ずかしいですがご覧ください。

寺院の入口では、サルンと呼ばれる腰巻を巻いてくださいます。

階段を下りたその先に降り立つと

空気そして光がまったく違うことに気づかれることでしょう。

 

その神聖な空間は、日本の神社仏閣で感じるものとはまた異なった

もっと土っぽいような、自然の生み出す霊気に加速されるような

南国ならではのワイルドなパワーにつつまれるのです。 20131231_101843

 

 

 

 

 

さらに下にはみそぎを行う苔むしたがあり

滑りそうな階段を下りていくと、 豊満な肉体をした女神が一列にならび聖なる水を湛えています。

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ウブドにあるこの寺院遺跡は

象の洞窟という名前の 「ゴア・ジャガ」寺院で、11世紀につくられました。

日本だとちょうど平安時代後期、源氏物語の執筆されたころですね。

この遺跡は、1923年ヨーロッパ人により発見されました。

そしてさらに崩れた石積や土砂の下から、1954年神秘的な泉・沐浴場が見つかり

驚きをもって世界中へと発信されたのです。

 

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魔女ランダの印象的なレリーフの口から洞窟内部へと入ると

そのむかし修行者が瞑想したという15ものくぼみや

シバァ神の子供という象の顔をした知恵の神ガネーシャの像などが

1000年のときを経て包み込むように

私たちにを迎えてくれるのです。

 

 

 

 

2014年01月11日 up date

その12 「ぶどうの丘」

2013年11月19日・・・勝沼のぶどうの丘に行ってきました。

 

気候地質ともにぶどう栽培に適した山梨県勝沼は、

日本のワイン王国として様々なワイナリーが歴史を刻んでおり

それぞれに自社農園で栽培したぶどうを用いた美味しいワインを生産しています。

お写真とともに旅の様子をご覧いただきましょう。

 

新宿から”特急かいじ”に乗り1時間半もすると「勝沼ぶどうの郷」駅に到着です。

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高台にある駅舎から向こうを見渡すと、

青空の下、美しい勝沼盆地が目に飛び込んできます。

流れる風も爽やかにスゥと深呼吸したくなるほどのスガスガしさ

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それでは景色を楽しみながら

ランチ予定の「原茂ワイン」さんへと向かいましょう。

グルッと盆地をなぞるように道沿いをすすむと

赤く紅葉したや見事に並んだ干し柿の風景に心がなごみます。

お花の花材用に銀色に輝くヘクソカズラの実を採取

思ったより遠くてハアハアしましたが、

原茂さんに到着です。

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レストランもあるこのワイナリーは、

作家の林真理子さんお気に入りと伺い楽しみにしていました。

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時代を感じさせる木造の建物には暖炉があり、2階へと上がるとレストランになっています。

ベーグルにロースト野菜やソーセージなど

とってもヘルシーなワンプレートに

11月2日に解禁となったばかりの新酒ワインで乾杯です。

”原茂デラウェア2013”

じつはワインのことサッパリわからない私ですが、

はじめて美味しいと感じてしまったのです。

なんといって良いのか、こちらでぶどうの樹にじかに触れたせいでしょうか

頭の中に房々と実ったデラウェアがギューとつぶされて

樽に詰められ熟成していく様子が目に浮かんできたのです。

甘酸っぱくて生のぶどうの感じが残っていて若々しくて

感激してしまいました。

もちろんお土産に買って帰りましたが、あとでお取り寄せもした次第です

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こんなに可愛いアイドル犬

お庭に気持ちよさそうに

寝ていましたよ

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そのあと、「勝沼ぶどうの丘」へ

地下にあるワインカーヴには、山梨のワイナリーすべてのワインを試飲できます。

タートヴァンと呼ばれるカップを首に下げて、

あちらこちらと少しづつ口に含んでみると

確かにそれぞれに香りや渋み色合いなど違うものですね。

ふと昔の生徒さんのご主人に、

メルシャンワインのテイスティングのお仕事をなさっている方がいたことを思い出しました。

彼女にお宅に伺ったとき、黒のアタッシュケースのなかにビーカーに詰められた様々な香りのビンが並べられているのを見て

 なんて繊細なお仕事なのでしょう、と感じたものです。

今から思えば、もっとお話をうかがっておくのでした。

でも、今回の旅で少しワインに目覚めましたので

遅まきながらもっともっと美味しいワインを楽しみたいと思います

2013年12月06日 up date

その8 「時をきざむ香り」

2013年10月1日

 

香時計というのをご存知でしょうか?

 

その昔、時を管理することは権力者の特権でした。

太陽の光でできる影によって時を計る「日時計

水の落ちる量を計測した「水時計」(漏刻ろうこく

そして燃え尽きる香の長さで時をしる「香時計」など、古代から人間は様々な方法をもって時を知ろうとしていたのです。

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お香の燃焼速度というのは以外に正確なもので、

一定の速度で燃焼していく香の性質を利用した香時計は、

中国で誕生しやがて日本へと伝えられました。

平安時代の宮廷には、

自然科学や自然哲学を担当する“陰陽寮”という部署がありましたが、

この部署の管理のもと撞かれる“時の鐘”の音を合図に、

都中の寺社にある香時計がいっせいに点火され時間を計っていたといわれています。

 

香りで時を知るなど、なんとも優雅で素敵ですね。

 

ここで、ある意味をもって灯され続けている常香盤のお話をご紹介しましょう。

 

比叡山・延暦寺の常香盤

幼い頃より仏教を学び、

18歳にして一年に10名ほどしかあたえられない東大寺の受戒を授かった僧”最澄”は、

さらなる修行の場を大寺院ではなく故郷の比叡山へと求めました。

785年、京都と滋賀県の県境にあたるこの深い山中に草庵をむすんだ最澄は、

厳しい修行のすえ霊木で自ら薬師如来を刻んで本尊とし、

後に総本堂となる根本中堂(こんぽんちゅうどう)一乗止観院(いちじょうしかんいん)を建立します。

この秘仏が祀られている延暦寺根本中堂には、

最澄自らがおこしたといわれる”不滅の法灯”が受け継がれており、

開祖以来1200もの長きにわたって灯され続けているのです。

そして万が一、この法灯が消えてしまったときの備えとして延暦寺で焚かれ

続けているのが「常香盤」のお香なのです。

 

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時代を感じさせる正方形をした木製の香炉には

、平に整えられた灰がおさめられ綺麗な卍型の溝が刻まれています。

この溝には白檀の薫り高き“黄抹香”が埋め込まれ、

淡く白い煙とともに絶えることなく堂内に静かなる芳香を放っているのでした。

 

 

 

 

 

~比叡山への旅~

 

かねてから足を運びたいと考えていた

、比叡山延暦寺へと訪れる時がやってきました。

古来より京都の鬼門である東北を守護する霊峰としてあがめられてきた比叡山ですが、

京都駅から出発した1時間ほどのバスの旅は

眼下の琵琶湖の美しさもあいまってじつに心地良いものでした。

しかしやがて標高が高くなるにつれ、

杉木立が続く深山静寂の様相が濃くなっていきます。

天台宗の総本山でもあるこの寺は、

法然・親鸞・道元・日蓮など数々の名僧を輩出したことでも有名で、

次第に聖域へ足を踏み入れるという思いに緊張がふくらんでくるのでした。

東塔に到着したバスを降りると、

なんともすがすがしい山独特の冷気に包まれます。

それでは、さっそく国宝である根本中堂へとむかうことにしましょう。

根本中堂の入り口を入ると、左右には円柱の連なった長い回廊がありました。

参拝者は左より進んで堂内へとはいり、

中陣より低い位置にある内陣をのぞき込むようにして礼拝するのですが、

そうすると内陣に祀られている薬師如来像が参拝者と同じ目線にくることになります。

初めて体験するこのような形式に驚きましたが、

これは“仏も人もひとつ”という仏教の教えから来ている

天台様式の造作との説明を受けました。

しかしながら、

今まで見上げるようにして拝んでいた本尊が

自分の足よりも下に祀られていることがなんとも申し訳なく感じられてしまいます。

本尊の前にある3つの釣燈篭にはオレンジ色の光を放つ

不滅の法灯”がユラユラと優しく灯っており

また、大師が入寂して以来保たれているという常香盤の白檀の香りが

静かに堂内を包みこんでいるのでした。

 

私が訪れたのは、秋も終わりに近づく頃で寒々とした静かな日でしたが、

堂内の床には親切にホットカーペットが引かれ、

人がある程度集まると穏やかな表情の僧侶の方からの説法が始まります。

大師様みずから彫られたという本尊を前に、

ひんやりとした薄暗いお堂できくお話はことのほかありがたく感じられるのでした。

 

以前ある僧侶の方に、仏門に入られた訳をお聞きしたことがあります。

その方は「意味は何もないのです。導かれたのでしょう・・・。」

とだけお話しくださいましたが、

人は自分の思いと関わりなく見えない力によって道を定められることがあるのでしょう。

緒田信長による比叡山の激しい焼き討ち、そして復興への歴史また、

命を落とすかもしれないという荒行「千日回峰行」に挑む修行僧の思いなど、

俗世界を離れこの比叡山に身を投じた僧侶たちの

様々な人生が頭をよぎっていくのでした・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

2013年10月01日 up date
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