2014年10月10日
日本の香り草枕
一日を無事に過ごしホッとお布団に身を横たえたときの安堵感は
何事にも変えがたいものですね。
そして、そのまますぐにスヤスヤと眠りにつけたならどんなに幸せなことでしょう。
良い眠りと爽やかな目覚めは、
古今東西を問わず人類の大きな願いのひとつでした。
人は眠ることで記憶の整理と身体の回復をおこなうといわれます。
睡眠に問題が生じると、だるさを感じるだけでなく
怒りやすくなるという統計までありますが、
人生の⅓を眠りの中で過ごすわけですから、
ぜひ植物の優しい香りを活用して質の良い睡眠をとりたいものですね。
イグサの芳香成分
人類は、古代より身近にある草花や樹木を利用して暮らしに役立ててきました。
畳を代表とする日本のイグサの文化は、
四季にくわえ梅雨もある日本の気候風土が生み出した
代表的な草文化と言えるでしょう。
動物のように自由に動きまわることのできない植物は、
フィトンチッドという強い殺菌作用をもつ物質を大気中に放出し
自らの身を守っています。
森に入ると癒される森林浴の爽やかな芳香は、
この作用によるものなのですね。
畳やゴザ・枕の材料として使われてきたイグサの香りはじつに心地良く、
畳変えしたお部屋に入ると
ゴロッと寝転がって深呼吸したい気持ちにさせられます。
このイグサの芳香成分は、
フィトンチッドが20%、
ジヒドアクチニジオリドという紅茶にふくまれる芳香と同じ成分が10%のほか、
リラックス効果を高めるαシペロンやバニリンなどによって構成されているのです。
また、イグサには有害物質を吸着し菌の増殖を抑える効果のほか
湿度を調整する力まであるといわれていますので、
身体を横たえたり頭を乗せる素材として最適のものと言えるでしょう。
日本最古の草枕
奈良時代 8世紀
正倉院御物「白練綾大枕(しろねりあやのおおまくら)」
この枕は、草を編んで筵(むしろ)状にしたものを箱形に固く整えて束ね、
上から白い綾織の絹を貼り付けたものです。
長さ68×幅36×高さ28.5センチという大きさから、
クッションのように脇に置き肘をついたり
身体をもたせかけたりして使われたのでしょう。
何の草で編まれたものかは解明されていませんが、
草枕の主な材料となるイグサ・ハス・マコモ・ガマ・ススキ・ヨシ・イネの
いずれかが使われているものと思われます。
また、中国ではその昔、薬となる大切な香草や琥珀(止血の薬)などを枕に詰め、
必要な時に取り出し使用したと伝えられますので、
そうした古代の薬草も一緒に詰められているかもしれませんね。
自然の植物で作られた 草枕は香りの効能だけでなく
頭をのせた時の柔らかさもじつに優しく
デトックス効果の高い素材として近年再認識されているのです。