雪月花
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その62「日本の香り事始め 3~飾る~」五節句・端午

2016年4月12日

 

『日本の香り事始め』     供える

                     くゆらす

                      飾る

                      清める

                      身に纏う

 

『日本の香り事始め』 ~その参「飾る」~

 

あなたの記憶の扉を開いてみると、

幼い日から積み重ねてきた

多くの香りの印象が刻み込まれていることでしょう。

 

人間がいてそして自然がある という西洋の考え方に対し、

自然とともに人は存在する という東洋的思想の中で暮らしてきた私たちにとって、

 

自然と共に歩むことは当たり前のことであり

また、大きな喜びでもありました。   知床つめくさ

 

四季の移り変わりとともに食卓を彩る旬の素材、

順番を待つように咲き始める花々、

山肌を眺めれば芽吹きから若葉

そして成長し枯れ落ちるまでの樹々の営みに

人の一生を重ね合わせることもあったことでしょう。

季節を大切に過ごす 日本の人々に継承されてきた五節句の風習には、

自然からはなたれる芳香があふれているのです。

お教室で制作してきた様々な室礼飾りを振り返りながら

四季折々の日本の香りを ご一緒に思い浮かべてみることにしましょう。

五月五日(端午・たんご)

「兜包みの五月飾り」

兜包の五月飾り

邪気を払うといわれる薬草”菖蒲葉”と、

礼法から生まれた折形を組み合わせたデザインです。

折型とは、

室町時代の武家社会において和紙に包んで贈り物をする

という大切な礼節として誕生し、

包む中身によって多種多様な造形が生み出されました。

特徴的なシボの入った高級和紙”檀紙”

布で作った菖蒲の若葉

爽やかな新緑の楓をあわせ、

白と緑のシンプルながら格調高いお飾りへと仕上げていきます。

「杜若の結び文」

杜若の結び文

五月の爽やかな風の流れる湿地に

紫のグラデーションを描くように咲き乱れる杜若。

この花は多くの芸術家に愛された姿美しい名花といえるでしょう。

美しい色合いの薄絹で

花びらを一枚ずつ縫い上げ、

真っ直ぐに伸びる細葉と一枝の青楓を添え、

根元には薄様の和紙に香をしのばせた文を結び仕上げました。

“結び文”とは

古来の手紙の様式のひとつで、

季節をいろどる花や木の枝を手折り

贈り物や手紙に添えて届ける、

なんとも風情あふれる習わしです。

結び文の香は

5月から6月にかけて出回る青山椒の実に

桂皮や丁子を合わせて調合しました。

その香りはじつにすがすがしく、

杜若・青楓・青山椒と季節を同じくする者同士

大変相性の良い組み合わせとなりました。

2016年5月7日 up date
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